【主張】G20と議長国日本 米を引き込む手腕みせよ

 米中の対立で世界経済が悪化する懸念は共有できても、両国に正面から局面打開を促すことはできなかった。福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の現実である。

 同時に行われた貿易相らの会議を含めて、声明に「保護主義と闘う」などの文言が入ることもなかった。米国の強硬姿勢に腰が引けて、当たり前のことすら明記できない。これではG20の限界を意識せざるを得なくなる。

 市場経済の約束事を守らず覇権を追求する中国に対し、これを改めさせるのがG20本来の役割だ。ところが、その先頭に立つべき米国が多国間協調を軽視するから結束が乱れるのである。

 米国の振る舞いはトランプ大統領次第だ。今月末の首脳会議で独善的な行動を自重させて対中共闘を促さなくてはならない。議長国であり、トランプ氏と親密な安倍晋三首相の責務である。

 米中摩擦に伴う一段の景気減速を回避するため、財務相らが「さらなる行動を取る用意がある」と共同声明に明記し、財政と金融、構造改革の政策総動員を再確認したのは当然だ。消費税増税を控える日本も海外経済に注意を払い適切な政策を講じる必要がある。

 貿易赤字の解消にこだわる米国を念頭に置き、貿易だけでなくサービス取引や所得収支を含む経常収支を持ち出したのも妥当だ。経常収支の不均衡是正には各国の経済構造などの複合的な要因に着目しなければならない。2国間の輸出と輸入だけを取り上げて、日本などを攻撃する米政権の姿勢を改めさせる論拠としたい。

 途上国の成長を後押しする質の高いインフラ投資について、借り手国が抱える債務の持続可能性や透明性、開放性などの原則でも合意した。巨額で不透明な資金支援で相手国を縛り、影響力を行使する中国に、国際ルールの順守を迫るためにも重要な意味を持つ。

 問題は、どこまで実効性を確保できるかだ。中国は途上国への融資実態について、地方政府が実施しており全容がわからないなどと言い訳し、改善を怠ってきた。監視の強化を徹底すべきである。

 中国には、国有企業に対する不公正な補助金など、G20として改善を迫るべき構造問題も多い。米中摩擦で揺らいだ多国間の枠組みを再構築するためにもG20は厳しく対処しなければならない。

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