【主張】和牛の遺伝資源 流通管理と法改正を図れ

 農林水産省は和牛精液や受精卵の海外流出を防ぐため、法改正を視野に本格的な対策に乗り出した。7日の農林水産業・地域の活力創造本部(本部長・安倍晋三首相)で流通管理の徹底や罰則強化の方針を示した。

 和牛の遺伝資源は日本の財産だ。和牛の受精卵は国や自治体、生産者らが長年の試行錯誤で改良を重ねた技術の結晶である。海外流出を防ぎ、ブランド力を守るためにも、実効性のある法整備と国内流通システムの見直しが急務である。

 昨年7月、大阪在住の男らが和牛の受精卵を中国に持ち出そうとした事件がきっかけだ。男らは起訴事実以外にも、たびたび中国へ持ち出していた。中国・海南島には和牛牧場の存在が確認されている。由々しき事態だ。

 自民党は6日、和牛の精液や受精卵の海外流出防止に向け、政府への提言をまとめた。

 受精卵の生産や流通、在庫状況などを定期的に把握するための新たな仕組みづくりが柱だ。種雄牛(しゅゆうぎゅう)の表示や帳簿管理の義務化などの対策も想定している。畜産農家に対し、受精卵の保管状況を抜き打ちで検査することも提案した。

 農水省は、人工授精を規制する家畜改良増殖法の改正を視野に検査の運用見直しを進める。

 流通の過程では多くの機関や個人が介在する。譲渡の際、海外に流出させないなど、使用目的を限定した誓約を売買契約に明記する案もある。精液や受精卵を運ぶ容器にバーコードを印字し、流通管理を徹底することも検討中だ。

 農水省は平成18年、和牛の遺伝資源保護に関する検討会を開催した。和牛精液の場合、植物の種子と違い、品質の均一性を担保するのが難しい。知的財産として保護しにくいとの判断で、法整備を見送った経緯がある。

 だが、海外への不正流出防止には、現行の家畜伝染病予防法では限界がある。法律が家畜伝染性疾病の発生や蔓延(まんえん)の防止を目的とし、遺伝資源の海外流出を想定していないためだ。

 和牛の遺伝資源は今も海外から狙われている。日本からの流出を防ぐため、実効性のある法整備を進めてほしい。

 質の良い和牛が海外で生産されれば、日本の畜産農家は大きな打撃を被る。法整備と流通管理の両面から、思い切った手立てを講じなければならない。

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