【主張】韓国の禁輸で敗訴 何のためのWTOなのか

 到底、納得できない乱暴な判断である。

 福島や茨城など8県産水産物に対する韓国の禁輸について、世界貿易機関(WTO)で紛争処理を担う上級委員会が、これを不当とした紛争処理小委員会(パネル)の判断を破棄した。日本側の事実上の敗訴だ。

 福島第1原発事故を理由とする韓国の禁輸は必要以上に貿易制限的で、恣意(しい)的または不当な差別だとしたパネルの判断に瑕疵(かし)があると断じた。さりとて、日本が主張した科学的な安全性が覆ったわけではない。韓国の禁輸がWTO協定に整合的と認定したわけでもなく、釈然としない。

 詰まるところ、ルール違反かどうかを明確にしないまま、ただ訴えを退けただけといえないか。これでは一体、何のためのWTOかと疑念を抱かざるを得ない。

 WTOの紛争処理は二審制のため、これが最終判断となる。その結果、韓国だけでなく、同様に規制が残る中国や台湾などでも撤廃が遠のくことを危惧する。

 日本は科学的根拠に基づいて措置の撤廃を求め続けるべきだ。韓国に求める2国間協議で断固たる姿勢を貫いてもらいたい。

 韓国は、1審に当たる昨年2月のパネルの判断で禁輸の解禁を促され、これを不服として上級委に上訴していた。

 今回の判断で、水産物の安全性が否定されたわけではない。これをきっかけに日本の水産物の悪評が国内外で広がるとしたら、それは誤りである。

 上級委が問題視したのはパネルの手続きである。韓国の主張に基づく一部基準の分析が不十分だったなどとしている。だが、議論が不十分ならば、上級委でさらなる検討をすればいい。そうした作業もなく、パネル判断を取り消すのはあまりにも無責任だ。

 日本政府の対応も十分だったのか。パネルでの勝訴に安堵(あんど)し、上級委でも勝てると楽観的にみていたのなら猛省すべきだ。国内でも風評被害が根強く残っている。外国に禁輸撤廃を求める以上、国内での風評対策をさらに強化すべきなのも当然である。

 かねて、トランプ米政権がWTOによる紛争処理の実効性に強い疑問を呈してきた。今回の判断はWTO改革の必要性を再認識させるものでもある。教訓を生かして改革につなげる。日本はそのための努力も怠ってはならない。

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