【主張】金正男氏暗殺裁判 醜悪な事件を闇に葬るな

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏の暗殺事件で、マレーシアの裁判所は実行役でベトナム国籍のドアン・ティ・フオン被告に禁錮3年4月の実刑判決を言い渡した。

 起訴罪名の殺人を「危険物による傷害罪」に変更しての判決で、被告はこれを受け入れている。同じく実行役とされたインドネシア国籍の女性はすでに釈放されており、裁判はこれで終結する。

 独裁者の実兄が白昼の空港で暗殺されるという極めて異様で醜悪な事件である。しかも犯行には、自然界には存在しない猛毒の神経剤「VX」が使用されている。北朝鮮首脳の関与が濃厚に疑われる重大事件を、このまま闇に葬ってはならない。

 正男氏は2年前、クアラルンプールの空港で顔に毒を塗られて殺された。実行役の女性2人は「テレビのいたずら番組の撮影」とだまされており、事件当時空港にいた北朝鮮の男4人が国外に逃亡したことが分かっている。

 「彼女らは北朝鮮のエージェントが組織した暗殺のための駒の一つにすぎない」として無罪を主張してきた弁護側は「北朝鮮の男4人が裁判にかけられない限り、正義がもたらされたとはいえない」と述べている。

 男4人は、ジャカルタやスラバヤ、ドバイ、ウラジオストクを経由して北朝鮮に帰国したとみられる。マレーシアの司法当局は4人の国内外における足取りの詳細などを明らかにし、事実を北朝鮮に突きつけるべきだ。

 フオン被告の爪からは「VX」の成分が検出された。事件は北朝鮮が大量破壊兵器である化学兵器を現実に保有し、自在に国外に持ち出し、使用をためらわないことを示している。

 これは日本を含む国際社会にとって大変な脅威である。国連安全保障理事会の決議は北朝鮮に、生物、化学を含む全ての大量破壊兵器の廃棄を求めている。成分分析の詳細など、VX使用の証拠は安保理や化学兵器禁止機関(OPCW)に申告すべきだ。

 ベトナムは2度目の米朝会談の舞台となり、金正恩氏を歓待した。自国民が暗殺犯に仕立て上げられ、拘束中にもかかわらず、これを首脳会談で抗議した様子もない。こうした甘い対応が、北朝鮮をいつまでも異形の国にとどまらせているのだ。

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