北方領土を奪って返さないロシア、今なお続くスターリニズムの悲劇

 「旧ソ連国家保安委員会(KGB)は知識人や指導層をシベリアに送り、命を奪った。バルトでも“カチンの森事件”と同様のことが起きていた」

 3年4カ月の英国赴任を振り返り、ラトビア首都リガの「KGB博物館」で聞いたガイドのオクパシジャス・ムゼスさんの言葉を思い出した。

 ロシアが再び影響力を拡大する中、半世紀以上苦しんだ旧ソ連の暗黒支配の実態を明らかにして、スターリニズムの悲劇を繰り返させない決意が込められていたからだ。

 KGBは市民を盗聴し、「危険人物」と判断すると監獄に収監、拷問し、いわれなき罪で殺害した。

 リトアニアの首都ビリニュスにある旧KGB本部は「ジェノサイド犠牲者博物館」として公開。エストニアはソ連時代、首都タリンの外国人ホテルでKGBが盗聴、盗撮して「コンプロマット」(中傷情報)を収集した実態を告発した。

 ソ連は崩壊したが、欧州連合(EU)離脱を選択した英国の国民投票にロシアが介入した形跡がある。ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)は、GRUの元大佐を神経剤で襲撃。欧州の選挙ではロシアのサイバー妨害の影がちらつく。

 「日本から北方領土を奪って返さないロシアは、スターリニズムを今も続けている」。ムゼスさんの指摘は正鵠(せいこく)を得ているように思えてならない。(岡部伸「ロンドンの甃」)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ