【主張】児童虐待 国を挙げて幼い命を守れ

 子供を守ることは、本来、親の役目である。だが子供を守れない親がいる。子供を傷つけ、死に至らしめる親さえいる。そんな悲痛な現実を目の当たりにしている。

 親が守れない子供は、社会が守らなくてはならない。社会が子供を守るためには法整備や相応の体制が必要であり、それには国の関与が欠かせない。

 千葉県野田市の小4女児、栗原心愛(みあ)さんが虐待を受けて死亡し、傷害容疑で両親が逮捕された。政府は関係閣僚会議を開き、安倍晋三首相は「幼い命を守り切れなかったことは悔やんでも悔やみきれない」と述べた。児童相談所などが把握している虐待が疑われる全てのケースについて、1カ月以内に緊急の安全確認を行う。

 安倍首相が「痛ましい出来事を繰り返してはならない。やれることは全てやるという強い決意で取り組んでほしい」と指示したのは昨年7月、東京都目黒区で5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが両親から虐待を受けて死亡した事件後に開いた関係閣僚会議だった。せめてこの時に全件確認を実施していれば、と悔やまれる。

 目黒の事件を受けて政府は新プランをまとめ、児相職員の増員や全市区町村での支援拠点の設置などを目標に掲げたが、現場は何も変わらず、事件に追いつくことはできなかった。

 心愛さんが学校に救いを求めた暴力の訴えは、市教委が父親の威圧に屈してコピーを渡し、児相は暴力を否定する心愛さんの記述を強引に書かされたものと認識しながら放置した。

 市教委も児相も当事者能力を欠き、互いの連携に乏しく、警察の協力も得ていない。教訓は何一つ生かされなかった。だが、国や行政の動きの遅さばかりを責められない。児童虐待防止の拠点となる「支援センター」の建設計画に「地価が下がる」などといって反対する地域住民の姿もある。

 悲惨な事件の度に、これを嘆くだけではなく、国も国民も平時に力を合わさなくては、虐待を減らすことはできない。

 警察庁によると、昨年、虐待の疑いで児相に通告した18歳未満の子供が初めて8万人を超えた。

 心愛さんは小学校に「どうにかできませんか」と父親の暴力を訴えていた。虐待を受けている全ての子供による、大人への叫びと受け止めるべきである。

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