【正論3月号】日本の空母が機能するためには タブーなき日本防衛論 元自衛艦隊司令官、香田洋二

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 日本のこれまでの防衛大綱を振り返ると、最初の「51大綱」以降の「別表」の中身は縮小続きでした。これまでは装備の数を減らし、その分を機動力で補うという傾向がありましたが、今回の防衛大綱でようやくこの減少傾向に歯止めがかかった感がします。考え方として“守り”から“攻め”への転換が図られたともいえます。これまでの防衛大綱は、いわば51大綱の遺産を食いつぶしてきたといえますが、今回の大綱は宇宙、サイバーといった新しい分野も含めて、より「積極的に打って出る」内容となっています。

 6年前に初めて策定した「国家安全保障戦略」を踏まえてのことかと思いますが、対処すべき相手国として中国を正面に据えたわけですから、大綱でもう少し詳しく言及しても良かったと思います。

 今回の防衛大綱策定は、官邸主導で行われたと聞いています。それはシビリアン・コントロールの観点からは健全なことだといえるでしょう。ただ一方で、現場の意見がきちんと吸い上げられていたかどうか。大綱を読めば、上から下へのコントロールの部分は明確に見えますが、現場のニーズがきちんと上がっているかという点では、疑問が残ります。現場は実態としては「蚊帳の外」に置かれていたと考えられます。陸海空自衛隊の現場のニーズが反映されたかという点で、今回の大綱は画竜点睛を欠いているといえます。

■F35B搭載は最適解なのか

 51大綱以降、冷戦の終結もあって日本の防衛はますます少数精鋭路線を目指すようになり、縮小傾向にあったといえます。それが今回の大綱では劇的に変わりました。その象徴のひとつが、いわゆる「空母」の導入です。

 一部のマスコミは、「いずも」型護衛艦にF35B戦闘機を載せるのは「攻撃型空母に当たるのではないか」という議論を持ち出していますが、全く盛り上がりをみせていません。国民の多くは「8機程度の戦闘機を積んだくらいではとても攻撃型空母などと言えるレベルでない」ということを理解しているようです。

 通常国会が始まれば一部の野党は「攻撃型空母ではないか」と追及を始めるのでしょうが、不毛な議論にしかならないでしょう。とはいえ国も、いずも型の改造について無用の追及を避けるためか、空母とは言わず「多用途運用護衛艦」と呼んでいます。ヘリを積んでいない護衛艦もその目的は多用途ですから、かなり苦しい命名ではありますが…。

 さらに、いずも型「護衛艦」に戦闘機を常時搭載するのではなく、必要に応じて積むということになりました。「だから攻撃型空母ではない」というのは、単なる比喩です。別にやましいことをしているわけではないのだから、堂々と「国土防空型の空母」と称すればよかったと思います。

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