【主張】訪中の金正恩氏 非核化以外の着地点なし

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、習近平国家主席の招きで中国を訪問した。近く開催が見込まれるトランプ大統領との米朝首脳再会談に向けて動き出した。

 孤立する北朝鮮を陰に陽に支えてきたのが中国である。金氏が再会談に臨むにあたり、中朝で戦術をすり合わせて緊密な連携を誇示し、交渉を有利に進める思惑があるのだろう。

 だが、米朝再会談の行き着く先は一つしかないはずだ。北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化である。それなくして、北東アジアの平和はあり得ない。

 米朝首脳は昨年6月、史上初の会談を行い、北朝鮮が完全な非核化に取り組むことを確認した。両首脳はその後、再三、再会談への意欲を表明した。

 それが、実現に至らず、非核化交渉が膠着(こうちゃく)したのは、北朝鮮が口約束の「非核化」だけで、国連安全保障理事会などが科す制裁を緩めるよう要求しているからだ。

 北朝鮮はまず、すべての核兵器と関連施設を申告し、検証に応じなければならない。生物・化学兵器や弾道ミサイルの廃棄も義務づけられている。制裁緩和の議論は、これらの問題解決に道筋がついてからだ。

 金氏は新年の辞でトランプ氏と「いつでも会う」と表明した。トランプ氏も金氏から書簡が届いたとして再会談に意欲を示した。

 再会談の開催は、非核化への具体的な前進が示されなければ意味がない。政治ショーに終われば、北朝鮮は核・ミサイルを保持したまま、制裁緩和の要求を一段と強めることになろう。

 金氏は昨年、米朝会談の前後3度にわたって訪中した。中国は北朝鮮を経済的に支え、国際社会の非難から擁護し、今も制裁緩和を唱えている。

 そればかりか、北朝鮮による洋上の密輸取引「瀬取り」を防ぐため警戒監視活動を行っていたカナダ偵察機に対し、中国空軍機が飛行妨害したとも報じられた。

 米中は本格的な対立局面に入っている。北朝鮮の脅威を対米交渉カードに利用するのはもってのほかだ。責任ある大国の指導者として習氏は、金氏が完全な非核化へと踏み込むよう説くべきだ。

 日本は北朝鮮との間で拉致被害者の奪還という大きな課題を抱える。動き出した北朝鮮情勢に機敏に反応しなければならない。

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