【主張】安全保障 戦略環境の変化に即応を 対中・北抑止に役割果たせ

 安全保障に関わる戦略環境が大きく変貌したことに政府や国民は危機意識を持ち、備えていかねばならない。これが、今年の安全保障上の最も大きな課題である。

 変化は2点ある。1つは、米中両国が「新冷戦」ともいうべき長期の対立局面に入ったことだ。その中国は尖閣諸島(沖縄県)や南シナ海の支配をあきらめていないのに加え、台湾や宇宙分野でも軍事的優位を追求している。

 もう1つは、朝鮮半島全体の「反日化」だ。北朝鮮の核・ミサイル問題が未解決であるのに、韓国の文在寅政権は反日姿勢をますます強めている。米韓同盟もぎくしゃくしており、将来の在韓米軍撤退や大幅縮小まで、日本は用心しておくべき段階に入った。

 ≪台湾への武力行使防げ≫

 中国で注目すべきは、台湾への強硬姿勢である。習近平国家主席は2日の演説で、台湾統一に向けて、武力の使用を放棄しない考えを表明した。これに対し台湾の蔡英文総統は強く反発している。

 安倍晋三政権は、平成28年3月施行の安全保障関連法によって、集団的自衛権の限定行使に道を開いた。守り合う間柄となった日米同盟の絆は格段に強まった。

 そもそも、集団的自衛権の問題は、元駐タイ大使の故岡崎久彦氏が中国が台湾を武力統一しようとする危機を念頭に、行使容認の必要性を唱えたことから論議が本格的に始まり、実現したものだ。

 中国に支配されれば台湾の「自由」は失われる。日本の海上交通路(シーレーン)も押さえられてしまう。沖縄への軍事的圧力も一層増す。日本の「自由」と繁栄、そして日米同盟にとって、到底容認できない事態といえる。

 日本は、台湾海峡の平和を守るため外交努力を尽くすとともに、万一の有事に備えた対応要領を米国との間で作っておくべきだ。台湾海峡有事は、尖閣など南西諸島における日本有事に容易に転化する事態でもある。

 米中の「新冷戦」は、安全保障と経済を切り離して考えることはできない。米国が、情報通信など先端技術分野から、中国共産党政権の影響下にある中国企業を排除しようとしているからだ。

 ハイテク企業を中心に、サプライチェーン(供給網)から中国を外す動きが始まっている。インターネットでも、独自の言論統制、検閲体制をとる中国は、世界から切り離されつつある。

 日本がどちらの世界に属すべきかは明らかだ。中国的価値観の世界は日本から「自由」を奪う。日本は米中の仲裁者となり得ない。安倍政権は、中国の経済的、軍事的覇権戦略である「一帯一路」に手を貸す対中協力の道をとるべきではない。

 中国の脅威を抑止し、平和を保つため、日本がどのような責任を果たせるか。米国や友好国であるオーストラリア、インド、英仏などとの不断の戦略調整が必要である。そのためにも、日本自身の安全保障と経済の対中政策の整合性を図らねばならない。

 ≪「北朝鮮核危機」再燃も≫

 北朝鮮の核・ミサイルをめぐる緊張が再び高まる可能性にも備えたい。金正恩朝鮮労働党委員長は新年に当たっての演説で「完全な非核化へと進むこと」が「確固たる意志だ」と語った。

 だが、製造し、隠し持っている核兵器やミサイルの廃棄には言及していない。「制裁と圧迫を行うなら、新しい道を模索せざるを得なくなる」と恫喝(どうかつ)もした。

 今年行われる予定の2度目の米朝首脳会談の行方次第だが、北朝鮮が頑(かたく)なな態度を改めなければ、米国が経済、軍事両面の「最大限の圧力」路線へ復帰するのもやむを得ない。一昨年を上回る緊張状態になるかもしれない。

 安倍政権は、米国と協力しつつ、核・ミサイルの脅威除去と拉致被害者の奪還に全力を尽くさなければならない。

 韓国は、対北制裁緩和を説くなど日米韓の連携を乱している。海上自衛隊機への火器管制レーダー照射は明らかな敵対行為だ。反日的な韓国は国防費を伸ばし、2019年度予算では約4兆7000億円となった。日本の5兆2500億円と遜色がなく、このままでは日本を抜き去るだろう。

 日本をとりまく戦略環境は構造変化を起こしている。それを見過ごした鈍感さが危機を招いたと後世批判されないよう、政府も国民も機敏に対応すべき時である。

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