【主張】「入管法」衆院通過 論点置き去りは許されぬ

 与党や維新は、なぜ採決を急いだのか。極めて残念である。

 外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が、27日の衆院本会議で、与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、参院へ送付された。

 国会審議などで指摘されたさまざまな疑問は、解決していない。

 政府は今国会で改正案を成立させ、外国人労働者受け入れの新制度を、来年4月から始めようとしている。労働力不足のためというが、制度があやふやなまま踏み切れば社会に混乱が生じ、日本人と外国人双方の人権が損なわれる事態になりかねない。

 改正案は、単純労働者の受け入れに事実上道を開き、試験に合格した人には家族の帯同を含む永住を認める。

 安倍晋三首相は移民政策ではないというが、納得することは難しい。国の形を大きく変え得る政策の転換だが、多くの国民に伝わっているとは言い難い。

 改正案は、外国人受け入れに関わる中核の部分を省令で定めるよう丸投げするものだ。

 安倍首相は受け入れ人数の上限を、改正法の成立後、法務省令の「分野別運用方針」で定め、5年間は守る考えを示した。政府は先に、5年間で最大34万5千人の試算を示したが、上限をつくる「素材」なのだという。

 受け入れ数という基本さえ明らかにせず、改正案を成立させたいというのは無理がありすぎる。

 どの分野でどれだけ受け入れたいのか、5年間に限らず、中長期的な見通しを示すのが先決だ。

 「白紙委任」では、なし崩しに受け入れが進み、日本の総人口のかなりを外国人が占める状況も想定せざるを得ない。

 欧州など多くの国で社会の分断や外国人の排斥が起きている現実から目をそらせば、大変なことになる。日本だけが人権侵害の国にならないという根拠は、新制度のどこにも見当たらない。

 外国人に日本人と同等の賃金を払うのは当然だが、正社員になれない日本人も多い中で、全体の賃金水準が押さえ込まれる恐れもある。厳しい「労働環境」により失踪が相次ぐ技能実習制度の抜本的改善の必要性も明らかになり、実態の把握さえ不十分だ。

 論点置き去りで突き進んでは、禍根を残すだけだ。

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