断水続く避難生活、災害時こそ「口腔ケア」を 関連死要因の誤嚥性肺炎を防ぐ

広範囲で断水した熊本県宇城市。厳しい日差しの中、給水で得た水を節約して使いながら人々は暮らす=3日午前(酒井真大撮影)

熊本地震の発生から10日あまり。断水により入浴や洗濯がままならない中、口の中を清潔に保つことも難しくなっている。避難生活では水や食料の確保が優先されがちだが、口腔(こうくう)の衛生状態の悪化は高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎など健康被害につながるおそれがある。災害関連死を防ぐためにも、口腔ケアを見過ごすわけにはいかない。

口腔環境の悪化に警鐘

衛生状態の悪化は、単なる不快感だけでなく、健康被害のリスクも高める。高齢者を中心に注意が必要なのが、災害関連死の要因の一つとなる「誤嚥性肺炎」だ。平成28年の熊本地震の人的被害は直接死が50人に対し、関連死が225人に上った。その内訳(令和3年3月時点)は、誤嚥性肺炎を含む「呼吸器系の疾患」が3割を占め、最多だった。

災害時の誤嚥性肺炎は、衛生状態の悪化で増えた口内の細菌が気管から肺に入ることに、体力や抵抗力の低下が重なって発症する。過去の震災で被災者の口腔ケアに携わってきた歯科医師で、ときわ病院(兵庫県三木市)の歯科口腔外科部長、足立了平さんは、「誤嚥性肺炎は(冬場に増える肺炎とは違い)季節性がないことが特徴で、夏場の災害でも注意が必要」と呼びかける。

夏は脱水により唾液の量が減り、口内の自浄作用が低下する。加えて、冷房の影響で口内の乾燥が進み、さらに細菌が増えやすくなるという。足立さんは、「使える水の量に限りがあるとは思うが、熱中症予防と同様に口内環境を保つためにも、水分のこまめな補給を心がけて」と呼びかける。

節水しながらできるケア

水を節約しながら口内を清潔に保つ方法がある。足立さんは、コップに大さじ2杯(約30ミリリットル)程度の水を入れ、歯ブラシを浸して湿らせてから歯を磨き、歯ブラシの汚れをティッシュで拭い、また磨くことを繰り返す方法を勧める。最後にコップの水を数回に分けて口をすすぐ。歯ブラシがない場合は、清潔な布などで歯や歯茎を拭う方法もある。

液体歯磨きや洗口液は、どちらも水が使用できない場面で役に立つ。日頃から備えておくとよいという。

口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防だけでなく、全身の健康維持にも重要な役割を果たす。歯周病が悪化すると、炎症物質などが全身に影響し、糖尿病の血糖コントロールを悪化させたり、脳卒中の危険因子ともなる動脈硬化の進行につながったりすることがある。

過去の震災では、避難生活に伴う健康悪化が課題となった。東日本大震災では脳卒中患者の増加も指摘された。足立さんは「持病のある人にとって、災害時の口腔ケアは健康維持に欠かせない」と注意を促す。

衛生用品の備蓄が鍵に

被災地では口腔ケア用を含む衛生用品への需要が高まっている。防災教育に長年携わる危機管理教育研究所の国崎信江代表は、熊本地震の被災地で支援を行うなか、「お風呂に入れていない人たちのストレスが極限に近づいている」とし、「口腔ケアができていない人も見られる」と話した。

国崎さんによると、被災地の高齢者福祉施設では、十分に体を洗うことができず、紙おむつでお尻がかぶれるなどのトラブルも出ている。食料や飲料水が徐々に届き始める一方で、歯磨き用品、水のいらないシャンプー、ボディーシートなど衛生用品の配布を求める声が増えているという。

こうした被災地の状況から、国崎さんは食料や水に次いで、衛生用品についても、普段からの備蓄を促す。「避難生活のストレス軽減のために備えて」と呼びかける。(村田幸子)

猛暑の避難は循環器疾患に注意 運動不足や服薬中断で症状悪化、脱水で不整脈も

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