ジャズ作曲家・指揮者の挾間美帆(39)が11月、首席指揮者を務めるデンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)を率いて来日し、東京、大阪など7都市を回る。日本ツアーは令和4年以来4年ぶり2度目。4月発表の新作「Frames(フレイムス)」を携えた凱旋(がいせん)公演だ。
先人たちの響き、随所に
DRBBは、デンマークの公共放送局が1964年に創設した楽団。サド・ジョーンズら名匠が歴代の首席指揮者を担い、北欧を代表する存在だ。挾間がその8代目に就いたのは2019年。米ニューヨークを拠点に、年に4度ほど渡欧し、楽団を導いている。
アルバム名の「Frames」は、額縁を意味する。「私の前に7人の首席指揮者がいる。その先人たちが額縁だとして、そこに私と現在のメンバーで新しい絵を描くという思いを込めました」
全6曲は挾間のオリジナル。DRBBが創立60周年を迎えた2024年、記念のガラ・コンサートのために書き下ろした。作曲の手がかりに迷う挾間に、楽団員が「歴代指揮者たちの音楽を勉強してみては」と勧めた。先人をひもとき、その響きを随所に忍ばせていった。
例えば初代イブ・グリンデマンには開拓者を意味する「ザ・パイオニアズ・クエスト」を、マイルス・デイビスの「オーラ」を書いた3代目のパレ・ミッケルボルグには「オーラⅡ」をささげるといった具合だ。
挾間が大学院で作曲を学んだ恩師、ジム・マクニーリーは前任の首席指揮者だったが、今作の制作中に世を去った。「亡くなる前、偶然会いに行けた。その記憶が、作曲する間ずっと頭を離れなかった」。その思いを楽団員と分かち合い、絆の強い録音になった。
2度おいしい音楽
前回の来日は、コロナ禍の制限がなお残るころだった。「お客さんは全員マスクで、歓声も上げられなかった。よりオープンにファンとつながれる今回の機会を、楽団員は首を長くして待っています」
育ちはクラシック畑で、「ジャズの〝ブランド〟を持っているわけではない」。だが、北欧の老舗楽団は、かじ取りをこの日本人作曲家の手に託した。「その期待に応えられる作曲を続けたいです」と語る。
「ビッグバンドは楽譜による必然的な部分と即興による偶然的な部分を行ったり来たりして非常にユニーク。クラシックとジャズの両方を楽しめて1つで2度おいしい音楽なんです」(石井健)