2月28日、世界に激震が走った。トランプ米大統領が、米・イスラエル両軍による軍事作戦でイランの最高指導者、ハメネイ師が死亡したと発表。イラン側もこれを認めた。最高権力者のみならず、軍の要職も軒並み殺害されるという「体制崩壊」一歩手前の事態である。
しかし、この歴史的転換点を前に、日本の地上波テレビの反応は驚くほど鈍い。
湾岸戦争の熱量はいずこへ? NHK手嶋氏の記憶
かつて、中東で戦火が上がればテレビはもっと詳報していた。1991年の湾岸戦争。当時、NHKのワシントン特派員だった作家の手嶋龍一氏が、緊迫した表情で米軍の空爆開始を伝えた姿を覚えている世代も多いだろう。あの頃、テレビは「今、世界で何が起きているか」を刻一刻と伝え、お茶の間はその映像に釘付けになった。
ところが今回、SNS上では「テレビを付けてもスポーツやグルメ番組ばかり」「報道しているのはNHKだけ」という嘆きが溢れている。ネットを駆使する層がX(旧ツイッター)でリアルタイム情報を追う一方で、地上波メディアはかつての「報道の使命」を失ったかのような沈黙を続けている。1日朝のTBS系「サンデー・ジャポン」では、急遽、冒頭に時間を割いて中東情勢を伝えたが、ハメネイ師の死亡確認が速報された時点でもNHK総合がニュースに切り替わることはなかった。
エネルギーと生活を直撃する「遠い国の出来事」
「遠い中東の出来事」と切り捨てるわけにはいかない。日本が輸入する原油の約9割は中東に依存している。ホルムズ海峡が封鎖されれば、ガソリン代の高騰どころか、物流が止まり、食料品から電気代まであらゆる生活コストが跳ね上がる。
トランプ氏はイラン市民に「政府を掌握せよ」と体制転換を促しているが、革命防衛隊の残党や親イラン勢力による「報復」の行方は予断を許さない。ハメネイ師という絶対的な重石を失ったことで、中東全域が統制不能なカオスに陥るリスクもあるのだ。
犠牲となる一般市民と「正義」の矛盾
トランプ氏は今回の作戦を「正義」と呼んだ。しかし、現地の報道では子どもを含む多くの一般市民が犠牲になったとも伝えられている。軍事目標の破壊という名目の裏で、罪のない命が失われる現実に、国際社会の視線は厳しい。
「正義」の名の下に行われる爆撃が、新たな憎しみの連鎖を生むのではないか。報復の連鎖が始まれば、それは日本を含む世界経済への「致命傷」になりかねない。
テレビ報道の「終焉」と情報の取捨選択
日本のテレビ各局は、いかにも日曜の午前中にふさわしい番組編成のままだ。衆院選では「#ママ戦争止めてくるわ」のハッシュタグを拡散した人々からも、中東情勢に声をあげる声は聞こえてこない。
イラン情勢を受けて「防衛相・自衛隊」「首相官邸(災害・危機管理情報)」の公式Xアカウントが、迅速に情報を伝えているのが救いだが…。私たちはテレビが映さない「不都合な現実」を、自らの手で情報収集し、判断しなければならない局面に立たされている。
(zakⅡ編集部 霞蓮刃)