自民党の高市早苗総裁が衆参両院の指名選挙で第104代首相に選出された。初の女性首相としての手腕に期待がかかるが、経済政策や連立を組む日本維新の会との関係、外交・安全保障など山積する課題にどう向き合うべきか、有識者に聞いた。
日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長は「バランスの取れた財政運営を」と注文をつける。藤山氏は物価高対策としてガソリンの暫定税率の廃止は早期に実現する可能性が高いとみる。一方で、自維政権が連立政権合意書(合意書)で、早急に制度設計を進め、その実現を図るとした「給付付き税額控除」については、課題も多く「実現には時間がかかるのではないか」と分析した。
高市氏が総裁選などで訴えていた診療報酬の引き上げについては、社会保険料の増額という形で消費者の負担増につながる恐れがあるとしたうえで、「医療費の抑制策と合わせた議論が望まれる」とした。
高市内閣で財務相に起用された片山さつき氏は積極財政派とされるが、藤山氏は「財務省出身であり、財政再建の重要性も理解しているはずだ。バランスのとれた財政運営を期待したい」と述べた。
■ ■ ■
公明党との連立を解消し、保守色の強い維新との連立を組むことで、「保守ブロックが確立された。日本の政治が保守とそれ以外に分かれることになり、有権者は選択しやすくなる」とするのは関西大の坂本治也教授(政治学)。
その上で、坂本氏は米国のように二極化による対立が生まれる懸念や党内のリベラル派議員が離脱する可能性を指摘。「少数与党として、高市氏は難しいかじ取りを迫られるだろう」と話す。
維新は議員定数の削減や副首都構想を連立の条件とした。坂本氏は議員定数削減について「衆院小選挙区で落選し比例で復活する『ゾンビ議員』に対する国民の批判的な見方もある。比例代表の削減については実現可能性がある」と分析した。
協議体を設置するとした副首都構想については「段階を踏む必要があり、維新側も早期実現は考えていないだろう。大阪都構想ありきではなく、丁寧な議論が必要だ」と述べた。
■ ■ ■
慶応大の神保(じんぼ)謙教授(国際政治学)は、自維連立政権が「理念の保守」から「制度構築型の保守」への変化を志向する政権となるのではと話す。
神保氏は、自公連立で見られた「外交・安保のタカ派路線に公明党が歯止めをかける構図」ではなく、自維連立を「安全保障の制度改革を躊躇(ちゅうちょ)なく進める体制」と分析。
合意書には、安保3文書の前倒し改定や防衛装備移転の積極化など、「国家安全保障のハードウエアを再設計する内容が並ぶ」としたうえで「戦後の安全保障体制を実効的なものへと進化させようとするものだ」と話した。
一方で、公明離脱により、難しさが残る外交バランスの中でも「特に対中政策のかじ取りは困難が予想される」と述べ、「日米同盟、同志国連携は防衛・経済安全保障政策を重視する路線とともに強化されるだろう」と分析した。