【カイロ=佐藤貴生】イスラエルはイランへの攻撃で核関連施設を集中的に爆撃している。事実上、中東で唯一の核兵器保有国であるイスラエルは軍事的優位を維持するため、宿敵イランの核開発計画を安全保障上の脅威と位置づけてきた。これまでの攻撃はイランの核施設にどの程度の打撃を与えているのか。
米CNNテレビ(電子版)は15日、米政府当局者の話を基に、イラン中部ナタンズでは施設の電力供給網を破壊するなど大きな成果を挙げたと伝えた。ただ、ウラン濃縮用の遠心分離機がある地下部分について、国際原子力機関(IAEA)は「打撃を受けていないとみられる」とした。ウランは濃縮度90%超になると核兵器に転用できる。
科学者3千人がいるとされる中部イスファハンの施設では、建物3件が損傷したことが衛星写真で確認できる。ただし、イランの核開発関係者は攻撃を予想してナタンズとイスファハンの施設から「機器類を移動させた」としており、実害の程度は不明だ。
一方、高性能の遠心分離機があるといわれる中部フォルドウの施設は山岳地帯の地下深くにあり、大きな被害は免れているとみられる。ここは防空システムも備えており、イスラエル軍の無人機を迎撃したとの観測も出た。
イランの地下施設の攻略に不可欠なのが「特殊貫通弾(バンカーバスター)」だ。コンクリートも貫通する破壊力で、イスラエル軍は昨年9月、地下施設にいたレバノンの親イラン民兵組織「ヒズボラ」の指導者ナスララ師を殺害するのに使ったと報じられた。
イランはレバノンと違ってイスラエルから遠く離れている。米ニュースサイト、アクシオスはイランの地下核施設の破壊には「巨大なバンカーバスター」と、それを運搬する戦略爆撃機が必要で、「イスラエルは持ち合わせていない」としている。
このため米軍が戦闘に加わったり、イスラエル支援を本格化したりすれば、イランの核開発が壊滅的打撃を受ける事態があり得る。
ただ、現体制が存続する限り、イランで反米、反イスラエルの根が絶えることはなさそうだ。英BBC放送(電子版)は、「イスラエルは核科学者を暗殺できるかもしれないが、イランの(爆弾製造の)ノウハウや専門知識を破壊できる爆弾はない」と指摘している。