19日発表の都道府県地価(基準地価)調査では、JR大阪駅北側の再開発地域「うめきた2期(グラングリーン大阪)」(大阪市北区)への期待から周辺地域で地価上昇が加速。新型コロナウイルス禍で打撃を受けていた大阪・ミナミの主要地点も軒並み上昇に転じるなど、訪日外国人客需要の高まりへの期待が鮮明となった。一方、令和7年開催の大阪・関西万博の会場となる人工島・夢洲(ゆめしま)に近接した地域では上昇率が低下するなど、万博効果が限定的な側面もうかがえた。
6年夏の先行まちびらきに向けて工事が進むうめきた2期。米ヒルトンの最上級ホテルが入る高層ビルの建設や、大型都市公園の整備が急ピッチで進む。JR大阪駅の地下ホームはすでに開業しており、新たな人の流れが生まれている。
周辺の商業地は地価上昇が加速。商業施設「グランフロント大阪南館」の地点(大阪市北区)は、前年の2・2%下落から4・5%上昇に転じ、価格も1平方メートルあたり2300万円と大阪圏で最高値を維持。隣接する同市福島区の地点も11・5%増で、上昇率が大阪圏トップだった。
コロナ禍による訪日客需要の消滅で苦しんだ大阪・ミナミも軒並み上昇した。道頓堀川に面した同市中央区宗右衛門町は昨年の1・6%下落から、今年は4・3%上昇に転じた。周辺地域でも昨年下落や横ばいだった地域が上昇に転じている。観光客の回復が背景にある。
不動産経済研究所の笹原雪恵・大阪事務所長は「うめきた2期などの開発プロジェクトが着実に進展していることや、訪日客の回復で、キタとミナミの地価の回復が鮮明になった。大阪で万博が開催されるということも、海外を含む投資家などへのアピールにつながったのではないか」と分析する。
ただ万博が開催される夢洲に近い同市港区弁天の地点は、昨年は5・9%増だったが、今年は4・3%増と上昇ペースが鈍化した。
地域の不動産事業者は「万博を巡っては、パビリオンを出展する海外政府関係者が会期中に借りるスタッフ用のマンションを探しに来たことはあったが、それ以外で特に需要が増大したという感覚はない」と語った。
笹原氏は「万博来場者は市中心部のホテルに宿泊すればよく、建設事業者も万博関連事業で収益が見込めないなか、会場周辺地域で労働者向けのマンションを借り上げるような動きを見せていないようだ。万博による地価への影響は限定的ではないか」と指摘している。(黒川信雄)