国土交通省が19日に公表した都道府県地価(基準地価)では、新型コロナウイルス禍からの経済回復を追い風に、大都市を中心に地価の上昇が加速した。都市部や駅周辺といった利便性の高い地域では住宅ニーズが根強く、高騰が継続。周辺部に住宅を求める動きも広がり、上昇が波及した。一方、人口減少が続く地方では下落に歯止めがかからず、都市と地方で二極化が進む。
「市街地を中心に不動産価格が高止まりしている。あまりに高すぎて、郊外や中古物件を選択する顧客も増えている」
札幌市を中心に不動産事業を展開する「常口(じょうぐち)アトム」の担当者は最近の状況を説明する。中心部への人口集中が進む同市では、住宅地の価格が前年比12・5%上昇。2桁増は2年連続となる。
市内の急激な地価高騰を受け、割安感のある近隣自治体にも注目が集まり、隣接する北海道恵庭市では全国4位となる29・0%の上昇率を記録した地点もあった。
そのほか全国では、JRと私鉄の2系統で福岡市中心部にアクセスが可能な福岡県大野城市、東京都に隣接する千葉県市川市で15%に迫る高い上昇率となった。
大都市やその周辺地域に人気が集中する背景について、三井住友トラスト基礎研究所投資調査部門長の坂本雅昭氏は「コロナ収束に伴い、外出や出社の機会が増加し、利便性を重視する人が増えている」と説明する。
都道府県別で住宅地の平均変動率がプラスだったのは18都道府県。前年から4府県増えたが、大都市へのアクセスが良くない地域を中心に、下落が続く自治体も依然として多い。
住宅地価格は東京圏と名古屋圏が3年連続、大阪圏は2年連続、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市は11年連続で上昇。坂本氏は「利便性を重視する共働きや単身世帯が増加傾向にあり、都市部を中心に地価高騰は続く」と予測している。(川島優治)