米国映画産業の中心地、ハリウッドの俳優ら約16万人が加入する全米映画俳優組合がストライキを始めて2カ月が過ぎました。組合の求めは2つあります。
1つは、AIで生成した顔や声で俳優の演技を代替しないことです。制作者側には作業をAIで効率化し、コストを削減したいという思惑があります。
例えば俳優の姿をAIでスキャンして、あとは画面上で自由に動かせば、俳優を1日だけ拘束すれば済むため、ギャラは安く抑えられてしまいます。
また、米国の俳優は撮影時のギャラのほか、テレビ放映やDVD化されるたびに、追加の収入があります。ネットフリックスやアマゾン・プライム・ビデオのような動画配信サービスでも、再生回数に応じて俳優に払う報酬を増やしてほしいというのが2つ目の要求です。
全米脚本家組合も、5月からストを続けています。こちらもAI利用の制限や、動画配信サービスへの収入改善を求めています。
2つの組合ともネット時代に合わせた待遇に改めるよう求めているのですね。
ストによっていろいろな影響が出ています。映画「トップガン」で知られるトム・クルーズさんの新しい作品をはじめ、いくつもの撮影がストップしているそうです。
また、イタリア・ベネチア国際映画祭に、ハリウッドのスターはほとんど姿を現さなかったようです。
映画やドラマの制作中断が長期化した場合の経済損失は40億ドル(約5500億円)以上と指摘されています。
映画製作会社側は組合側の要求を「非現実的」と批判していますが、組合側は「今、やらなければ、将来どうやって解決するのか」としており、解決には時間がかかりそうです。
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K-da先生(慶田久幸) 中学校社会科教諭から新聞記者になり、教育問題などを取材してきました。趣味は登山と街歩き。世の中の難しいことを、簡単に分かってもらおうと頑張っています。