19日公表の都道府県地価(基準地価)では、半導体工場の進出先で地価の高騰が際立った。先端半導体の国産化を目指す「ラピダス」が2月に工場建設を発表した北海道千歳市は、新規雇用や関連企業進出への期待などから不動産需要が急増。地価上昇率は最も伸びた地点で、住宅地30・7%、商業地30・8%、工業地29・4%に上り、いずれの用途でも全国トップ3内に名を連ねた。半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)が工場を建設中の熊本県菊陽町やその周辺でも高騰が続く。
札幌市の南東に位置する千歳市。北海道の主要な玄関口となる新千歳空港のそばに、ラピダスの新工場予定地である広大な工事現場が広がっている。施工者の鹿島によると、ピーク時で4千人の作業員が建設に従事するという。
完成後も関連企業などを含めて数千人の雇用を生むと見込まれ、労働者やその家族など定住人口の増加が期待される。
住宅地は上昇率が全国1~3位を、商業地は2~4位を同市が占める。
TSMCの工場が年内に完成予定の熊本県菊陽町は、熊本市の北東に位置しており、熊本空港や九州自動車道にもアクセスが良い。
6月には、TSMCが第2工場の建設を同町周辺で検討していることを公表。地価高騰はさらに加速し、商業地は隣接する大津町で32・4%(前年は12・4%)、工業地も同町で31・1%(同19・6%)の上昇率を記録し、ともに全国1位となった。
明海大の山本卓教授(不動産学)は「半導体は『産業のコメ』とも言われ、裾野の広い産業。工場進出により、地価に大きく作用する」と話している。(川島優治)