100歳以上の高齢者が過去最多の9万2139人になった。昨年より1613人も多い。53年連続で増えている。いずれは10万人に達するだろう。
「人生100年時代」といわれる。高齢者が生きがいを持ち続け、健康でより良い人生を全うする。そんな社会を目指したい。「敬老の日」のきょう、その思いを国民全てで改めて共有したい。
大正12年生まれで、今年100歳の著名人らがいろいろな場面で活躍している。
茶道裏千家の千玄室前家元(100)は、米ニューヨークの国連本部で平和祈念の献茶式を行い、茶会を開いた。元特攻隊員で知られ、その体験を語るとともに茶道普及をめざして国内外で講演活動を行う。
11月に100歳を迎える作家の佐藤愛子さん(99)も健筆をふるう。『九十歳。何がめでたい』(平成28年)はミリオンセラーだ。続編を発表後に一旦、断筆宣言したが、撤回している。これからもご自身のペースで書き続けていただきたい。
こうした例は、これから当たり前となるだろう。加齢とともに人の助けが必要になるのは仕方がない。だからといって、人に必要とされなくなるわけではあるまい。
仕事でも趣味でも、家事でもいい。100人の高齢者には100通りの生き方がある。人は必要とされることが生きる糧になる。多様な高齢者像を、社会全体で育むことが大切だ。
佐藤さんに「毎日が敬老の日」という文章がある。
「『敬老の日』なんて、本来なかったものが急に作られたのは、老人が弱者にされてしまったためであろう。昔は毎日が『敬老の日』だったから、そんなものは必要なかったのだ」(『女の学校』から)
日本には老人を敬う文化があり、そこには人生経験を積んだ人の役割が確かにあった。
一方で最近は、高齢者を狙う犯罪が増えてきた。弱者と捉えているからだろう。そこに年長者への敬意は微塵(みじん)もない。
年を取ること、つまり時間の流れは全ての人に平等だ。だからこそ、いずれ老人になる若者も、その道を通ってきた高齢者自身も、年を重ねた誇りをゆるがせにしてはならない。
お年寄りこそ、胸を張って生きるべきなのだから。