岸田文雄政権の第2次再改造内閣がまず取り組もうとしているのが、物価高を踏まえた経済対策である。
首相は先の記者会見で、9月中にその柱立てを閣僚に指示し、10月中をめどに対策を取りまとめる意向を表明した。併せて、財源を裏付けるための令和5年度補正予算案も編成する考えだ。
原油高騰や為替相場の円安基調で足元の物価はなお高水準である。大企業を中心に賃上げが広がってきたものの、物価高の勢いには追いついていない。
その点で政府が適切な施策を講じ、苦境に立つ家計や企業を支える必要性はある。減速する中国経済などの海外情勢も十分に見極めて、実効性の高い経済対策としなければならない。
注意したいのは、規模ありきの大盤振る舞いで対策の規模を膨張させることだ。これは従来の経済対策で常態化していた傾向である。新型コロナウイルス禍で一段と顕著になった。
だが、コロナ禍から本格的に回復してきた現在の経済は昨年までとは異なる。巨額の財政出動の論拠とされてきた深刻な需要不足もみられなくなった。むしろ、訪日客需要の高まりも相まって人手不足による供給制約が問題になっているほどだ。
そんな中で無節操に歳出を拡大すれば、インフレを助長することにもなりかねない。歳出圧力を強めがちな与党が特に認識しておくべきことである。
問われているのは対策の中身だ。想定されているのは、ガソリン価格の高騰を抑制する補助金の継続のほか、構造的な賃上げや投資拡大の強化、人口減少や災害の対策である。
具体化する際には、やみくもに財政資金をばらまくのではなく、低所得世帯や中小・零細企業などを重点的に支える工夫が求められる。賃上げ機運をさらに広げるため、税制を含む政策の強化で中小企業を後押しする取り組みも万全にしたい。
政府内では年末に向けて6年度当初予算の編成作業も行われている。5年度補正予算に盛り込むのは緊急性の高い施策に絞り、それ以外は当初予算で措置するのが筋である。ここをあいまいにしてはならない。
政府は今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」で歳出構造を「平時」に戻す考えを盛り込んだ。岸田首相はその点を改めて銘記しておくべきである。