第2次岸田文雄再改造内閣がスタートを切り、自民党は政府が保有するNTT株の売却に関する議論を本格化させる。撤廃も含めた見直し機運が高まるNTT法には、「研究開発成果の開示」など競合の通信大手も見直しを認めている規定が含まれる。ただ、NTTは光ファイバーなど今後の第6世代(6G)移動通信システムの整備に際しても鍵となる通信インフラを握っている。外資の流入を防ぐことや、他社との公正な競争環境を維持することなども踏まえ、見直せるのかが課題となる。
NTT法が制定された昭和59年当時、国内の通信事業はNTTの独占状態だったことから、国内の通信事業を維持・発展させるため、他の事業者への研究開発成果の開示や、全国一律の固定電話の提供などが課された。しかし、その後、世界的な競争は固定電話から携帯電話やインターネットに移行。NTTにのみ法律で制約が課されているのは、国際競争上不利との声が上がった。
こうした状況を受け、NTTの島田明社長は12日に開かれた総務省の有識者会議でNTT法の見直しを求めた。研究開発成果の開示義務により、海外に研究成果が流出する懸念も示した。
しかし、改正には課題も残る。NTT法は政府が3分の1以上の株を保有することや、外国人の役員就任の禁止を定めている。この規定がなくなれば、基本的な価値観を日本と共有していない中国などの影響が国内の通信インフラに及び、6Gの整備促進が難しくなる恐れもある。
さらに、競合他社からの反発も根強い。KDDIの高橋誠社長は「(光ファイバーなどの)特別な資産を保有したままの完全民営化には反対だ」と指摘。法改正により公正な競争環境が崩れることを危惧する。(根本和哉)