NTT法改正巡り攻防 自民議論加速、総務省は抵抗

NTT東日本の本社=東京都新宿区(斉藤佳憲撮影)
NTT東日本の本社=東京都新宿区(斉藤佳憲撮影)

第2次岸田文雄再改造内閣がスタートを切り、自民党は政府が保有するNTT株の売却に関する議論を本格化させる。防衛力強化の財源として出てきた話だが、NTT法の見直しを通じ、国際競争力の向上や経済安全保障の強化を目指す。総務省やNTTと競合する通信大手が反発する中、自民は完全民営化も選択肢に来年の法改正を視野に入れる。

自民はプロジェクトチーム(PT)で政府保有のNTT株の売却やNTT法の廃止を含めた検討を進めており、11月にも提言をまとめる。議論では防衛費増額に伴う財源の確保だけでなく、情報通信分野の国際競争力強化や経済安全保障も重視する。

「NTT法のあり方に関する議論を加速させ、年内にも一定の方向性を見定めたい」

党役員人事で再任された萩生田光一政調会長は13日の記者会見で強調した。

8月に自身が委員長を務める防衛財源確保の特命委員会の下にPTを設置し、PT座長の甘利明前幹事長と議論を主導してきた。先の人事では萩生田氏の処遇も焦点だったが、特命委の関係者は議論の加速に向け萩生田氏の続投を歓迎する。

NTTは光技術を使った次世代通信構想「IOWN(アイオン)」の世界展開などを計画する。ただ、同法は研究成果の開示を義務付けており、経済安保上の問題がある。共同開発などの妨げにもなっており、甘利氏は「NTTだけを昭和レトロの規制行政で縛ることは、日本の国際競争力を縛ることと同義だ」と指摘する。

特命委は6月にNTTの完全民営化を含めた法改正の検討を盛り込んだ提言を岸田文雄首相に提出したが、取りまとめる際、総務省は抵抗した。同省はこれまでNTTの人事や事業計画に強い影響力を持っており、民営化で既得権益を手放したくないようにも映る。

萩生田氏は周囲に「首相も進めるよう言っている。抵抗勢力とは戦う」と語る。

党内には地方の通信インフラ維持や外資による株の買い占めへの懸念から完全民営化や同法の廃止に反対する声も根強い。閣僚経験者は「国の保有比率を現在の3分の1から下げるとしても一定程度は国の関与を残すべきだ」と指摘する。 政府が保有するNTT株は時価総額約5兆円に上る。売却する場合、防衛財源に充てられるのは一部とみられ、その他の使途も今後の議論の焦点になる。

日本の競争力強化に向け、スピード感を持った改革が迫られている。(田村龍彦)

研究成果の海外流出防止…外資・競争で危惧も

NTT法の廃止を 明星大・細川昌彦教授

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