日本大学の信用は地に落ちている。汚名を返上するには、相当の覚悟が必要である。理事長、学長をはじめとする大学側に、その認識はあるか。
日大アメリカンフットボール部の寮で大麻や覚醒剤が見つかり、部員が麻薬取締法違反罪で起訴された事件で、他にも10人近い部員が違法薬物に関与した疑いがあり、大学が調査しているという。端緒は「他の部員と一緒に吸った。寮で見つかった大麻はその残り」という、被告の供述だったとされる。
改めて、事件を「部員1名による薬物単純所持という個人犯罪」と断定し、部の無期限活動停止処分をわずか5日で解除した大学側の判断が問われる。
警視庁の2度目の家宅捜索で再び活動停止となったが、昨年11月に別の部員から大麻使用の申告を受けながら口頭注意にとどめていた部の指導陣の処分さえ、いまだにない。
部のコーチを、部員に対するパワハラを理由に7月27日付で無期限指導停止処分としたことを8月18日に公表したが、詳細には触れず、薬物事件との関連も不明である。
文部科学省は薬物事件をめぐり、捜査機関への連絡が遅れたことなど、大学側の対応に問題が生じた原因や背景を検証するよう文書で指導し、9月15日までに報告するよう求めていた。だが日大側は、調査が間に合わないなどとして期限の延長を求めた。
これでは、何もしていないに等しいではないか。問題は、10人近い部員の犯罪事実の立証にあるのではない。それは警察の仕事である。だが部員間の薬物蔓延(まんえん)が強く疑われる証言や事象がありながら、手をこまねき続け、失態を重ねる大学側の無為無策が問われているのだ。
実態を把握できず、再発防止策も披瀝(ひれき)できないまま活動の再開のみを決めた判断の誤りについてなど、大学は一連の経緯をつまびらかにすべきである。
林真理子理事長は、元理事長が脱税、元理事が背任で摘発された事件を受けて就任した。8月の謝罪会見では「お飾り」という言葉に反発する一方で「スポーツの機構が分からず遠慮があった」とも述べた。背任事件でも主舞台となった体育会を放置する限り日大の信用回復はないと、さすがにもう気づいたろう。厳正な対処が必要だ。