岸田文雄首相は13日、内閣改造にあわせて首相官邸で記者会見に臨んだ。冒頭発言の要旨は次の通り。
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この2年間は、国民の声を丁寧に聞き、協力しながら、新しい時代の扉を開いていく。そうした取り組みを進める毎日だった。
2022年2月には、ロシアがウクライナに侵攻し、国際的な物価高が進んだ。物価高に対する総合的な対策を進めるとともに、民間企業には、物価高に負けない、高い水準の賃上げをお願いした。今年の春闘の賃上げ率は3・58%と、30年ぶりの高い水準となった。最低賃金についても、過去最高の引き上げとなり、全国加重平均で、1004円となった。
経済政策では、脱炭素化やデジタル化などの国内投資を拡大しながら、成長と分配の好循環を実現する新しい資本主義の取り組みを進めてきた。産業界の見通しによれば、今年は設備投資が100兆円を超え、過去最高になる見通しだ。エネルギー、環境政策も大きくかじを切った。
外交面では、ロシアによるウクライナ侵略により、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序が危機にひんしている。東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮による核、ミサイルの脅威も増大している。国民の安全と生活を守り抜くため、防衛力の抜本的強化に踏み出す決断もした。
わが国の外交力を一層高めるべく、首脳外交にも全力で取り組んでいる。今年5月にはG7広島サミット(先進7カ国首脳会議)を開催し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、G7諸国が一致団結して、取り組む方針を確認した。8月には(米国の)キャンプデービッドで、日米韓首脳会議を開催し、3カ国のパートナーシップの新時代を開いていく決意を内外に示した。
この2年間を通じて、新しい時代の息吹が確実に生まれつつある。しかしながら、まだ、道は半ばだ。なぜならば、われわれの前に流れている変化の大河は、まさに100年に1回ともいえる時代を画するものだからだ。
国際社会のパワーバランスは劇的に変化をしている。AI(人工知能)の進展など、技術の変化は加速度を増している。世界の経済を取り巻く状況も急速に変化しつつある。この変化の大河を、乗り越え、わが国の安心と豊かさを次の世代にバトンタッチする。目の前の変化を前にして立ち止まることは許されない。
変化を力にする日本。目の前に広がる大きな変化を、新しいチャンスに変えていく。雇用者のリスキリング(学び直し)、スタートアップ企業の支援、デジタルの力を活用した地方の成長、脱炭素技術を生かした新しい産業作り、子供・子育て政策の充実。変化をチャンスとして力に変えていくため、政府は総力を挙げていく。
国際情勢の変動にも、たじろいではいられない。わが国こそが成長するインド太平洋の安定軸となり、世界をリードする。世界の多くの国は、そうした役割を日本に求めている。
この内閣は、「変化を力にする内閣」だ。明治維新、戦後復興など、わが国はこれまでも変化をチャンスとし、チャンスを力にしてきた。こうした歴史がある。
大きな変化を前に、当時は実現不可能と思われた経済成長や、豊かな社会作りを実現した歴史がある。変化を力として、閉塞(へいそく)感を打破し、明日は今日より良くなる。誰もがそう思える国づくりを、一緒に行っていこうではないか。
国づくりに向け引き続き、経済、社会、外交・安全保障の3つを政策の柱として、強固な実行力を持った閣僚を起用した。
まず第1の柱は経済だ。成長と分配の好循環を実現するため、バブル崩壊以降、30年間続いてきたコストカット経済を脱却し、賃上げ、人への投資の促進、研究開発投資を強化するといった、攻めの経済への転換が少しずつ動き始めている。この動きを着実なものとするため、まずは足元の物価高に対応しなければならない。
ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく。若い世代の所得向上のための年収の壁を打ち壊していく。
新しい資本主義に向けた取り組みを加速し、物価上昇率プラス数%の賃上げを継続的に実現するための政策や、官民連携により、150兆円規模の投資を誘引するための取り組み、さらにはAIやスタートアップなど、将来の成長基盤の整備を進め、デフレからの脱却を確実なものとしていく。
第2の柱である社会については、2030年までが少子化トレンドを反転させるラストチャンスであり、まずは、先般、閣議決定した「こども未来戦略方針」に基づき、次元の異なる少子化対策を早期に実施すべく、必要な制度改革の法案を、次期通常国会に提出する。
第3の柱である外交・安全保障に関しては、G7や(日米豪印4カ国の戦略的枠組み)クアッド、日米韓など、さまざまな枠組みを活用しながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化に向けて取り組んでいく。
政府・与党が力を合わせ、先送りできない課題に正面から取り組んでいく。