主張

処理水と中国 孤立を自覚し難癖やめよ

ASEANプラス3の首脳会議に臨む、中国の李強首相(左)と岸田首相=6日、ジャカルタ(共同)
ASEANプラス3の首脳会議に臨む、中国の李強首相(左)と岸田首相=6日、ジャカルタ(共同)

東京電力福島第1原発処理水の最初の海洋放出が終了した。周辺環境に異常は確認されなかった。科学的な安全性を確保して実施されたということだ。

中国政府は海洋放出への難癖ともいえる批判をやめ、日本産水産物の輸入禁止措置を撤回すべきだ。それなしに日中関係の改善はあり得ない。

インドネシアで東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議が、インドで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれた。多数の首脳が集まったが、処理水をめぐる中国の主張は賛同を得られなかった。

中国の李強首相は6日のASEANプラス3(日中韓)首脳会議で処理水を「核汚染水」と決めつけ、海洋放出を批判した。岸田文雄首相は科学的に問題はないと説明し、水産物禁輸について「(放出は)国際社会で広く理解されているが、中国は突出した行動を取っている」と批判した。同じ日の立ち話で岸田首相は放出について説明したが、李首相は同意せず、水産物禁輸撤回に応じなかった。

科学と国際ルールを軽んじ、不当な輸入禁止という経済的威圧の手段を行使する。このような中国政府の振る舞いは自国の国際的地位を下げるだけだ。

李首相はその後の東アジアサミット(EAS)やG20サミットでは、処理水に直接言及しなかった。各国から中国への支持が集まっていない事実を反映しているのではないか。

一方、岸田首相はインドネシア、インド訪問を締めくくる記者会見で、米豪両国やインドネシア、マレーシア、太平洋諸島フォーラム議長国のクック諸島、オランダ、トルコなどから海洋放出への理解や支持が得られたと語った。放出開始前からの取り組みを含め政府、東電が安全性について説明してきた結果といえる。今後も丁寧に情報提供や説明を続けてほしい。

残念なのは、岸田政権が水産物禁輸について世界貿易機関(WTO)への提訴をためらっていることと、EASでは岸田首相が中国の名指しをやめ「一部の国」という表現にトーンダウンしたことだ。この会議では李首相が処理水に言及しなかったからというが不当な禁輸は解除されていない。名指しを避けてはならなかった。

岸田首相は与(くみ)しやすし―とみなされては国益を損なう。

今、あなたにオススメ

izaスペシャル

  1. 「SMAP再結成」を阻む、中居と木村深い溝 「木村だけは許さない」と漏らし…

  2. 美川憲一、ジャニーズ性加害問題「ずーっと知ってましたよ。どっぷりでしたから」 芸能界ご意見番が「ドラマチックシャンソン2023」本番前に〝衝撃告白〟

  3. 【首相会見】外相交代の理由聞かれ「林氏は有能だが…」

  4. 石川佳純、モデルのような写真に「美しすぎる」と海外からも反応

  5. “ジャニ離れ”で巻き起こる「タレントに罪はない」論が、まるで見当違いなワケ

今、あなたにオススメ