公立中学の校長が、少女のわいせつ画像を所持していたとして児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕された。教育者の立場を忘れたというより、立場を利用した卑劣な犯罪である。
逮捕されたのは東京都練馬区立中学の校長だ。都教育委員会の相談窓口に「過去に先生からわいせつ行為を受けた」とする相談が寄せられていた。警視庁捜査1課が家宅捜索し、校長室の机から、わいせつ画像を保存したビデオカメラが見つかった。
女子生徒の体を触っている画像や裸の画像があったという。以前勤務していた中学で撮影したとみられ、校長は「再び見ることがあると思い保存した」と容疑を認めている。
区の教育長らが記者会見し、「子供を教え導く立場にある校長が逮捕され、誠に申し訳ない」などと謝罪したが、遅きに失した。凶悪事件などを担当する捜査1課が摘発したのは、子供に対する事件を重くみた表れだろう。なぜこれまで発覚しなかったのか、教委は厳しく検証すべきだ。
子供への性犯罪は学校だけではない。大手学習塾「四谷大塚」の元講師の盗撮事件では、教え子の女児への余罪が分かり、元講師は強制わいせつなどの疑いで再逮捕された。連日のように教育現場での性犯罪が報じられ、わが子を心配する保護者も少なくないはずだ。
子供と接する職業に就こうとする人に性犯罪歴がないことを確認する仕組み「日本版DBS」創設に向け、政府の有識者会議は報告書をまとめた。犯歴は、不同意わいせつ罪などの前科が該当し、盗撮や痴漢行為の一部を含むとした。学校や保育所に確認を義務づけ、塾やタレント養成所など民間事業者も任意の利用が妥当とした。
この制度創設に対し「職業選択の自由」を侵害するとの意見や、初犯に対し防止効果がないとの慎重論もある。だが性犯罪者を教育の場から遠ざける手立てをためらうべきではない。
報告書が指摘するように、子供への性犯罪は「性的知識の未熟さなどに乗じて行われ、一度発生すると継続する可能性が高い」とされる。
卑劣な犯罪を甘くみず、隠さず、未然防止する強い意識を共有する。社会が子供を守るのは義務である。