中古車販売大手のビッグモーターの保険金不正請求問題で、SOMPOホールディングス(HD)は子会社の損害保険ジャパンの白川儀一社長が引責辞任することを決めた。
白川氏はビッグモーターの不正請求を認識しながら、競合他社に顧客が流出する事態を懸念し、ビッグモーターとの取引再開を促していたという。
目先の利益を優先し、法令順守と顧客保護の意識を欠いた経営判断は論外である。その経営責任は重く、辞任は当然といえるが、これで幕引きすることは許されない。
白川氏が主導したとはいえ、持ち株会社のSOMPOHDの監督責任も問われる。金融庁も損保ジャパンへの立ち入り検査を通知しており、不正請求問題の実態解明が欠かせない。
ビッグモーターをめぐっては昨年春以降、事故車を故意に傷つけるなどで保険金を水増し請求する疑惑が指摘されていた。このため、損保各社は昨年6月に同社との取引を中断し、徹底した調査を求めた。
だが、損保ジャパンはビッグモーターに多数の社員を出向させ、取引額も大きかったため、昨年7月には取引再開をいち早く決めた。白川氏は同月の役員会議で「事実関係としてはクロが推測されるが、厳しい調査を求めれば、関係が悪化する」などと発言したという。
不正請求をめぐる疑惑が払拭されず、他損保が取引停止を継続する中で、ビッグモーターとの関係維持を優先し、取引再開を決めた白川氏の判断は重大な誤りだ。企業統治の不全は極めて深刻というほかない。
記者会見した白川氏は「軽率な経営判断で深く反省している」と謝罪し、社長辞任を表明した。会見に同席した親会社のSOMPOHDの桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者(CEO)も「重く受け止めている」と述べた。桜田氏も経営責任は免れない。
ビッグモーターと損保会社の不透明な関係が浮き彫りになった今回の事件は、保険契約者の不信を招いたことを忘れてはならない。不正請求で保険料が割高になるなどの損失を受けた契約者の補償が急務である。
金融庁は徹底した検査で不正請求の全体像を明らかにしたうえで、必要に応じて厳格な行政処分に踏み切るべきだ。