2021年8月の米軍のアフガニスタン撤収から2年。現地で実権を握ったイスラム原理主義勢力タリバンによる女性や少女への人権弾圧は激しさを増している。国連は「ジェンダー・アパルトヘイト」と非難。未来を悲観して自死する女性が相次ぎ、アフガンは女性の自殺が男性を上回る数少ない国になったという。
バイデン大統領による撤収決断の内幕などを描いた米誌アトランティック記者の新著「ザ・ラスト・ポリティシャン(最後の政治家)」が話題だ。
同著によると、バイデン氏はオバマ政権の副大統領時代から「女性の権利の名のもとに米兵の命を危険にさらすつもりはない」と語るなど、アフガンの民主化事業に幻滅していた。
歴代大統領に「あと1年」と撤収先送りを促した「官僚の圧力」に自分は屈さない。そんな決意で臨んだバイデン氏は約2500人の残留を米軍トップに助言されたが、米中枢同時テロ20年となる21年9月までの戦争終結を押し通した。
人権を最重視するバイデン氏はアフガンには冷徹な態度を貫いた。だが、21年8月、ガニ大統領(当時)の国外逃亡を知らされると、「勘弁してくれ」と声を荒らげたという。
撤収2年の声明には自らの決断に触れる言葉はなかった。歴史の審判に委ねたのか。(渡辺浩生)