「最凶」「忍者グマ」などと北海道の酪農関係者らから恐れられ、今年7月にようやく駆除されたヒグマ「OSO(オソ)18」が、東京都内の飲食店などで食肉として提供されている。令和元年夏からの4年間に襲われた乳牛は66頭。大きな被害をもたらしてきたが、ジビエとして迎えた最後は好評だという。
「あれ? あのクマ、人は襲っていなかったよな」。東京・人形町でジビエ料理店「あまからくまから」を営む林育夫さんは8月21日、取引業者からの知らせに、そんなことが脳裏をよぎったという。月初めに仕入れ、既に炭火焼きなどとして客に提供したヒグマの肉が、実はオソ18だったという連絡だったからだ。
オソ18は令和元年夏以降、北海道東部で放牧中のウシを相次いで襲っていたヒグマ。被害が初めて確認された標茶町下オソツベツと、約18センチ幅の足跡からオソ18と呼ばれるようになった。道が特別対策班を設置して駆除を目指してきたが警戒心が非常に強く、標茶町や厚岸町で計66頭の牛が襲われ、このうち32頭が死んだ。
だが、釧路町で今年7月30日にハンターが仕留めたクマが、体毛のDNA鑑定によってオソ18であることが8月18日になって判明。その20日ほどの間に、同町で駆除されたエゾジカなどと同様に処理業者に運び込まれ、食肉として処理されたという。
北海道産の食材を扱う通販サイト「釧路丹頂商店」を運営するトライ・ユウ(釧路市)も「あまからくまから」と同様、仕入れたクマ肉がオソ18だったと8月21日ごろに業者から連絡を受けた。代表の浦瀬慎伍さんによると、既に販売していた肉はオソ18と判明してから2日ほどで完売したという。
「あまからくまから」では残っている肉はアイヌの知人を招いて供養をした上で、9月8日からアイヌのクマ鍋「カムイオハウ」として提供する予定。9月は既に予約がほぼ埋まっているといい、林さんは「多くのウシを襲ったクマだが、お清めをして、お客さんにおいしく食べてもらう場を提供したい」としている。