将棋 第71期王座戦五番勝負第1局(31日、神奈川県秦野市「元湯 陣屋」、主催・日本経済新聞社、日本将棋連盟)前人未到の全8冠独占に挑戦する藤井聡太七冠(21)が永瀬拓矢王座(30)に150手で敗れ、黒星発進となった。研究仲間である永瀬王座の終盤の粘りに屈し、「早くも厳しい状況になってしまった」と悔やんだ。タイトル戦の開幕黒星は7シリーズぶりで、今年度は無傷だった先手番の連勝も「12」でストップ。五番勝負の短期決戦、偉業達成に高い壁が立ちはだかる。
最高気温32度を記録した晩夏の神奈川県秦野市。日がすっかり落ちた対局室の外に虫の鳴き声が響く中、終盤まで攻守が入れ替わる互角の戦いが続いた。
永瀬王座にリードを奪われ、双方が1分将棋へ突入。約40分後の午後9時11分、上を向き、がくっとうなだれた藤井七冠は、グラスのお茶を飲んで投了した。
「早くも厳しい状況になってしまったかなと思いますが、できる限り良い状態で対局に臨んで、熱戦にできるように頑張りたいと思います」
12時間以上の激闘を終えての第一声。8冠ロードは決して、甘くない。短期決戦の五番勝負では手痛い開幕黒星。負けを受け入れ、前を向いた。
この日は先後を決める振り駒が行われ、藤井七冠が先手番に。運も味方につけたと思われた。エース戦法の角換わりをぶつけたが、手の内を知る永瀬王座の粘りに屈した。「お互いに玉が薄い形で戦いになって、どうバランスを取るか非常に難しい将棋かなと思った」。今年度、先手番で無傷だった12連勝(未放映のテレビ対局除く)がストップ。タイトル戦では今年1~3月の王将戦から6シリーズ連続で開幕白星が続いていたが、昨年10~12月の竜王戦以来の黒星発進となった。
歴史的シリーズの初戦だけに、対局開始時、日本将棋連盟会長の羽生善治九段(52)、前会長で第1局立会人の佐藤康光九段(53)、森内俊之九段(52)と永世称号の資格を持つトップ棋士が対局室にそろった。