内閣感染症危機管理統括庁は、次の感染症有事の際に政府の司令塔となる。平時は38人の専従職員で構成され、有事に備えた行動計画などを立案したり、有事を想定した訓練を実施したりする。中央省庁の準備状況にも目を配る。
有事になると、事前にリスト化し、訓練を受けた各府省庁の職員が加わり、101人に増員される。各府省庁の幹部職員を統括庁と併任させ、最大計300人規模で危機対応に当たる。
首相官邸が主導する形で、各府省庁の総合調整を行い、一元的に対応するため、統括庁のトップの「内閣感染症危機管理監」には、首相を直接支える官房副長官が就く。
組織が機動的に対処するには、厚生労働省との連携が欠かせない。そこで、感染症を医学面から統括する厚労省の医務技監が危機管理監を補佐する「内閣感染症危機管理対策官」として、統括庁との橋渡し役を担う。
首相は自ら本部長となる政府対策本部が立ち上がった段階で、都道府県知事や各省庁などの行政機関に適切な対応を急がせる「指示権」を発動する。統括庁は首相が適切な判断を下せるよう最新状況の把握に努め、対応策も練る。
統括庁の発足に合わせ、厚労省は省内に「感染症対策部」を新設し、感染症への対応能力を強化する。統括庁との役割分担を明確化し、感染症の情報収集・分析や予防接種に関する施策、保健所への支援や検疫体制の整備を行う。
令和7年度以降には、米疾病対策センター(CDC)をモデルにした感染症専門家の新組織「国立健康危機管理研究機構」(日本版CDC)が発足する。統括庁は同機構から科学的知見の提供を受け、対応する。
政府は縦割り行政の弊害を排した上で国と地方との連携も深め、より実効性のある対策を講じられるような体制を構築する構えだ。(村上智博)