世界情勢が激動するなか、日本をどう守るのか―。陸上自衛隊に「特殊作戦群」(特戦群)を創設し、初代群長を務めた荒谷卓(あらや・たかし)氏(63)と、海上自衛隊の「特別警備隊」(特警隊)創隊に携わり、初代先任小隊長となった伊藤祐靖(いとう・すけやす)氏(58)が、夕刊フジの緊急対談に応じた。陸・海で自衛隊最強の特殊部隊を率い、退官後も伝説的存在として現役自衛官らの信頼を集める2人の〝猛将〟が、国際紛争の裏側にも精通する鋭い読みで、ウクライナ紛争や「台湾有事」についての見解を語り、日本が直面している重大な危機も明かした。 (取材・構成、丸山汎)
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――特警隊、特戦群は「自衛隊の切り札」と言われる
伊藤氏「特警隊は、私がイージス艦の航海長だった1999年、日本人を拉致した可能性がある北朝鮮の工作母船を追跡した事件が契機となって、拉致を二度と許さず、日本人を奪還するためにつくられました。隊員は皆、自分の命よりも任務を優先するという習慣があります」
荒谷氏「一般部隊では不可能な作戦でも特戦群は遂行します。特戦群ができなければもう代替はなく、『最後はお前らに頼む』と言われれば、どんな状況下でも出動できる能力を保持しています」
――特殊部隊とは何か
荒谷氏「その国の政府が特殊部隊に何を期待するかで決まります。冷戦後の世界は、国の枠組みを超えて拡大するグローバル資本主義を抜きに語れません。私が特戦群創設のために留学した米グリーンベレー(陸軍特殊部隊)では、CIA(中央情報局)などの謀略活動とも連動し、政府転覆や、外国政府支援を行っています」
――現在のウクライナ情勢をどう見るか
伊藤氏「日本の報道ではウクライナ側に立つ発信がほとんど。報道機関には姿勢だけでもウクライナ発信とロシア発信の情報比率を同じにしてほしい」
荒谷氏「日本での論調は『悪いのはロシア』という一辺倒ですが、もう少し慎重になるべきです。現地情報を収集すると、日本の報道とのギャップが甚だしい。日本政府も米国から提供される情報に依存して世界を見ています」