離婚後の共同親権導入に向けて一歩踏み込んだ要綱案のたたき台が29日、法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会で示された。離婚後も父母双方に子育ての責務を課す一方、共同親権導入に慎重な意見も踏まえ、単独親権の選択も幅広く認める「折衷案」となった。ただ、部会内の意見の隔たりは大きく、要綱案の策定までには議論の曲折も予想される。
部会では令和3年3月の第1回会議以来、共同親権導入に積極的な意見と消極的な意見がぶつかりあってきた。
積極派は、婚姻の有無に関わらず子育ての責務が親にあるとして原則、離婚後も共同親権とするよう主張。これに対し消極派は、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の疑いがある家庭で、共同親権が認められることへの懸念を示していた。
これを受けて今回のたたき台は、原則を共同親権とした上で、親権の判断にあたってはDVや虐待を念頭に、父母関係や親子関係を考慮するよう明記。DVによる恐怖などを盾に無理やり共同親権の合意を強いられることがないよう、親権と離婚の協議は別にし、合意の過程に問題が発覚した場合は、親権者をさらに変更できる仕組みも取り入れた。
合意がなくとも最低限の養育費を請求できる規定を設けたのは、養育費について「協議すら困難な家庭がある」との意見も踏まえたものだ。
別居している親と子供との面会交流は従来、離婚協議の最終段階でようやく認められることが多かった。だが、たたき台では、協議の早い段階で家庭裁判所が双方に面会交流を促すことができる権限を付与した。(荒船清太)