対話型人工知能(AI)のチャットGPTに代表される生成AIを議論するシンポジウムが4日、東京大(東京都文京区)で開かれ、政財界の首脳が今後、わが国が取り組むべき活用や開発、リスク対応について語った。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、生成AIは10年程度であらゆる人間の質問に答えられる「占いの水晶玉」になるとの予測を述べた上で「日本は水晶玉の開発にがんがん取り組むべきだ」と熱弁を振るった。
グループ全体で生成AI活用の方針を掲げている孫氏は、チャットGPTの核となっているAI「GPT」の進歩によって「すべての質問に人間よりも的確に答えられるようになる。汎用人工知能(AGI)になる。AGIイコール(占いの)水晶玉だ」と指摘した。
孫氏はさらに生成AIが電力消費などの問題点を抱えることについても「ささいな問題だ。インターネット登場時の問題点もすぐに解決した。一部の知識人がAIでも揚げ足を取っているがそういう人は成長しない。日本は今こそ最大限でAIに取り組むべきだ」と強調した。
岸田文雄首相や西村康稔経済産業相も、日本のAI開発力強化の方向性を強調。岸田氏は「AIはさまざまな産業で活用が期待されているが、AIの開発力を持たないと多くの(既存の)産業の競争力が失われる」と危機感を示した。西村氏は生成AIで利用されている画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアを例に出し「日本でエヌビディアを超える企業を作りたい」と半導体産業の後押しに意欲を示した。
一方、著作権の侵害や偽情報など生成AIの抱えるリスク対応の方向性について西村氏は「日本はAI活用の積極性と慎重さの両方を持っているので世界をリードしながら議論を進めたい」と先進7カ国(G7)議長国である年内までに生成AIのルール策定を進める方針を示した。
米オープンAIのチャットGPT開発チームのシェイン・グウ氏は「世界のAI開発集団の中では日本人は少数派になっている」と問題点を指摘。海外の優秀な開発人材と日本の開発人材を結びつける取り組みが重要だと訴えた。