ベンチャー探訪

海外からネットで医療相談 YOKUMIRU

スマートフォンを使って医療相談に応じる、医師でYOKUMIRU役員の野田一郎氏(同社提供)
スマートフォンを使って医療相談に応じる、医師でYOKUMIRU役員の野田一郎氏(同社提供)

YOKUMIRU(ヨクミル、東京都渋谷区)は、海外オンライン医療相談サービスを展開している。海外に滞在している日本人が、パソコンやスマートフォンを使って手軽に日本人医師に相談できるもので、症状についての微妙なニュアンスも伝えられるという。慣れない海外生活で体調を崩したり、日本と異なる医療環境に戸惑ったりする人は多い。しかも保険が使えるのか、医療費がどれくらいかかるかも分からない。海外赴任者の健康不安を解消できるため、福利厚生が不十分な中小企業の海外進出も後押ししそうだ。

「専門医にすぐに見てもらえない」「現地語で話す医師の説明が分からない」

きっかけは、海外にいる患者からこんな悩みを聞いた野田一郎医師(現役員)が、事業プロデュースを手掛けるリオールの原翔平代表取締役に相談したことだった。原氏は応じ、「ビデオ会議の仕組みを生かせば解決できる」と、二人三脚でシステムを自社開発しサービスをつくり上げた。

予約の代行や医療行為は行わず、相談のみだが、市販の外部カメラを使うことで、耳・鼻・口の中などを医師に見てもらうことも可能だ。会員登録すれば、初期費用はかからず、医療相談料(1回3300円から)でサービスを受けられる。

新型コロナウイルス禍前の令和元年、在留邦人(永住者、長期滞在者)は約140万人、海外渡航者(旅行者、短期出張者)は約2千万人に達していた。

このため「海外にいても日本と変わらない環境を提供できれば支持される」と確信。2年2月から個人向けサービスを試験的に始めた。

本格展開に切り替えた3年1月からの2年間で登録会員は55カ国・地域で3千人を突破、相談に応じる日本人医師は海外在住を含め150人を超えた。

利用する企業・団体も増えている。海外赴任者が活躍するには家族を含めて、心身の健康維持が欠かせないからで、子育てに関する相談も多い。企業にとっても、サービス利用は安全配慮義務や健康経営に近づく。中小企業にとっては、導入は福利厚生の充実をアピールできる機会になりそうだ。

途上国への教育支援活動を行う公益財団法人CIESF(シーセフ)は「現地医療に不安がある中、日本人医師による相談機会の確保と適切なアドバイスは安全な活動環境の維持につながる」と信頼を寄せる。

原氏は現状を「会員を増やす基盤固めの時期」と位置づける。その先に見据えるのが「海外に行くならヨクミル」というブランドづくりだ。実現には知名度向上が不可欠で、その一環として、無料キャンペーンを実施する。

海外滞在中の健康不安を払拭するサービスも投入する考えだ。海外旅行者と留学生向けに契約期間中は使い放題という日額制プランだ。ブランド浸透を図り、8年7月期の黒字転換、9年7月期のIPO(新規株式公開)を目指している。(松岡健夫)


YOKUMIRU 原翔平代表取締役が平成29年、事業プロデュースを手がけるリオールを設立。令和2年2月に同社の新規事業としてオンライン医療相談サービスを開始。同事業での上場を目指すために4年2月、事業分割してYOKUMIRUを設立した。業績は非公表。

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