第5局は藤井新名人にとって最年少名人&7冠という前人未到の歴史的勝利となった。序盤は渡辺前名人がうまく攻めていたが、大技をかけにいったらすっぽ抜けたイメージ。終盤では藤井新名人の玉のかわし方が印象的で、するりと逃げ出す忍者のようだった。
その妙手で渡辺前名人の攻撃を遅らせ、反撃のカウンターも見事で一瞬のうちに寄せ切った。名人奪取に王手をかけた状態の20歳を相手に、渡辺前名人は『ミスが許されない』という重圧が力みにつながったようにみえた。藤井新名人は淡々とした雰囲気に加え、良い意味で棋風も分からない。その不気味さが相手にとっては怖く、指し手を間違えられないというプレッシャーを与えるのだと思う。
シリーズを通じて藤井新名人が盤上を制圧した。将棋もバタつくことなく地に足がついており、残るタイトルの王座戦も挑戦権を獲得できれば全8冠制覇は達成するだろう。無冠となった渡辺前名人はまたぜひ復活して、タイトルを奪取してほしい。(談)