【ワシントン=坂本一之】日米豪や中露など21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)の貿易相会合は26日、米中西部ミシガン州デトロイトで閉幕した。ロシアのウクライナ侵略を巡る意見対立で共同声明の取りまとめは見送られ、米国が議長声明を発表した。11月に米国で開かれるAPEC首脳会議でもウクライナを巡る対立が続くことが予想される。
議長声明は全参加メンバーの合意内容として、多角的貿易体制の重要性を確認。機能不全に陥っている世界貿易機関(WTO)に関して「必要な改革を引き続き支援する」と明記し、「新たな貿易上の課題に対処」していく姿勢を示した。供給網強化や脱炭素化、デジタル経済への対応なども盛り込んだ。
議長声明は、ロシアのウクライナ侵略について「世界経済に悪影響を与えている」などと非難する項目も明記した。タイで昨年秋に開催されたAPEC首脳会議の首脳宣言の文章と同様の表現で、議長声明は中露両国が反対したことを付記した。
議長を務めたタイ米通商代表部(USTR)代表は会合後の記者会見で、議長声明について「非常に透明性が高い」と強調。今年11月に米西部サンフランシスコで開くAPEC首脳会議で共同声明をまとめることは「可能だ」との立場を示した。APECの共同声明を巡っては、今月15~17日の交通相会合でもまとまらず、議長声明を発表している。
日本から貿易相会合に参加した西村康稔経済産業相は26日の会見で、WTO改革や供給網強化などで各国・地域が合意できたことを踏まえ「非常に意義があった」と述べた。
また西村氏は同日、レモンド米商務長官と会談。日米で半導体を巡る研究組織間の協力促進に加えバイオ技術や人工知能(AI)、量子技術での協力強化を盛り込んだ共同声明を発表した。両氏は次世代半導体の開発に向けた行程表を策定することで一致し、日米の外務・経済担当閣僚による協議体「経済版2プラス2」を早期に開催することでも合意した。