神奈川大学水泳部に所属する4年生の石原愛依選手(21)は来年開催のパリ五輪とパラリンピック両大会での出場を目指している。2年前に原因不明の視力の低下に見舞われ、一度は競技生活の引退も考えたが、周囲に支えられて前を向いた。2つの夢をかなえるため「一番大会に出ている水泳選手ではないか」。横浜市の同大で行われた26日の公開練習で報道陣に明るい笑顔をみせた。
ストレッチやボールを使った体幹トレーニングなどを行った後、ビート板やフィンなども使いながら泳ぎ、フォームを確認するなどした。「パラでも、五輪でも選手ということには変わらない」。報道陣の取材に対してこう語り、両大会出場への意欲をみせた。
2年前に視力低下
2019年の世界ジュニア選手権で2種目で銅メダルを獲得し、同大に進んだ。2年前の秋に原因不明の視力の低下によって視界が狭まって、中心部分しか見えなくなった。明るく照らされた競技場は、さらに見えづらい。
受け入れられず、競技をやめることを考えた時期もあったが、パラリンピックを目指す道もあると知り、徐々に前向きになった。その間、家族や友達、チームメートらが「愛依は愛依。自分自身でいていいんだよ」などと温かく見守ってくれたことが「一番、うれしかった」という。
当初は練習でもコース内の距離がつかめず、壁に腕を打ち、腕があざだらけになった。それでも泳いでいる際に壁から跳ね返る波で距離感をはかるなど、感覚を研ぎ澄ましながら練習を重ねた。あえて目をつぶって練習することもある。
レース本番の経験を多く積むため「出られる大会はすべて出ようと決めた」。多いときは毎週のように大会に出場するという。
日本記録を更新
3月の日本パラ水泳春季チャレンジレースでは女子200メートル個人メドレー(視覚障害SM13)と100メートル平泳ぎ(視覚障害SB13)に出場し、ともに日本記録を更新した。
パリ五輪出場に向けて重要な世界選手権の切符がかかった4月の日本選手権では涙をのんだが、サングラスをかけて白杖をついて入場した姿に交流サイト(SNS)などで「自分も頑張ろう」「応援しています」といった反響があった。「行動に移すことは勇気がいったが、良かった」
国際大会での自己ベスト更新、表彰台などを目標に掲げており、まずは出場が決まっている世界ユニバーシティー大会(7~8月・中国)での自己ベストを目指すという。(梶原龍)