長野県中野市の立てこもり事件では、県警の要請を受け、警視庁の捜査1課特殊班(SIT)と神奈川県警の特殊急襲部隊(SAT)が派遣され、長野県警の特殊班と協力して事件に対応した。
SITは警視庁の人質立てこもりや誘拐、企業恐喝などの凶悪事件を担当する捜査班の別称。規模や名称は都道府県警によって異なるが、全国警察にあり、刑事部に所属。人質立てこもり対応部隊が現場に急行して「交渉人」が人質の解放や投降を呼びかける一方、状況次第で突入し、人質の救出と犯人を生きたまま取り押さえることを目指す。
警察幹部は「大原則は説得での投降。だが、人質に危害を加えていたり、長時間の避難など周辺地域の社会生活に多大な影響が出たりなど、最終手段として強行突入する」とする。今回の事件では捜査員の説得で容疑者が自ら投降した。
このほか、警察庁が指定した「特殊班派遣部隊」がある。北海道、警視庁(関東、東北管区)、愛知(中部管区)、大阪(近畿と中国四国管区)、福岡(沖縄を含む九州管区)の5都道府県警が指定され、大規模警察が応援する態勢が設けられている。
一方、SATは警備部に所属する部隊で、銃器などの武器を使った事件やテロなどに対し、人質の保護や関係者の安全を確保しつつ、犯人制圧、検挙を主な任務とする。対テロ部隊として発足したが、平成14年に福岡県二丈町(現糸島市)の立てこもり事件で人質の女児が刺殺されたのをきっかけに、凶悪な刑事事件にも投入されるようになった。
これまでにも令和4年1月に埼玉県ふじみ野市で発生した立てこもり発砲事件で警視庁からSITとSATが派遣されるなど、全国で連携している。(王美慧)