小林繁伝

コバとナッパの新バッテリー「えげつないボール」 虎番疾風録其の四(230)

産経ニュース
小林投手⑲と若菜捕手の移籍バッテリー。キャンプ初のコンビを組んで〝呼吸合わせ〟を行った=昭和54年2月22日、高知・安芸市営球場
小林投手⑲と若菜捕手の移籍バッテリー。キャンプ初のコンビを組んで〝呼吸合わせ〟を行った=昭和54年2月22日、高知・安芸市営球場

キャンプでの小林は、これまでの遅れを取り戻すかのように飛ばしに飛ばした。

「ことしのボクがどんな働きをするか、誰もが注目している。やって当たり前の状況。騒動で調整が遅れたから―なんて言い訳は通じない」

2月16日、ブルペンで投球練習を始めた小林に首脳陣はくぎ付けとなった。この日、初めて「新兵器」のボールを披露したからだ。

ナックルの握りから繰り出すチェンジアップ。右打者のひざ元からシュートしながらストンと沈む。シンカーに近いボールだ。

「おおう」「これは使えるな」。小林が投げる度に首脳陣のつぶやきが聞こえてくる。小林に言わせれば「新兵器」でもないという。

「巨人時代に単なるスローボールとして投げていた。でも、ことしはこれをさらに磨き上げて〝武器〟にしようと思っているんです」

小林と〝新コンビ〟を組むのはトレードで西武から移籍した若菜である。

若菜嘉晴(よしはる)=昭和28年12月5日生まれ、小林より1歳下の当時25歳。福岡・柳川商から46年のドラフト4位で西鉄に入団した。愛称は「ナッパ」。3歳下の筆者も「ナッパさん」と呼んだ。この愛称、若菜の「菜」から取ったものと思っていたら実は違った。

入団3年目の49年、若菜は貧血症で1カ月間入院した。やせ細ってチームに戻ると、2軍監督が「なんやその青白い顔は。しなびた菜っ葉みたいや」と。以来「ナッパになった」という。

そのナッパが2月22日、初めて小林と組んでブルペンに入った。

「さぁ、いこか、コバさん!」の声で投球開始。速球やカーブ、シュートを投げているときはよかった。でも新兵器の沈む球を投げ始めると、ポロリ、またポロリ。「あっ、ごめん」とみるみる若菜の顔が赤くなった。

「いやぁ、えげつないボールだ。きょうは参った。でも大丈夫。これからオープン戦にかけてコバさんだけじゃなく、各投手の球を受けながら、癖の勉強をしていきます。投手のいいところを引き出すのがボクの役目ですから」

そんな若菜を小林は「きょうはちょっと戸惑っていたようだけど、いいじゃない。これから、これから」と励ました。

コバとナッパ。新コンビ結成である。(敬称略)

■小林繁伝231

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