公立学校の教員をめぐる処遇改善が議論されている。中央教育審議会が検討を始めた。
小中学校を中心に残業が多く、きつい職場だと敬遠され、教員不足が問題となっているためだ。教職の魅力を高め、教育の質向上につながる方策を真剣に考えたい。
注目されるのが残業をめぐる問題だ。昭和46年制定の教員給与特別措置法(給特法)により、残業代を支払わない代わりに基本給の4%の「教職調整額」を上乗せして支給している。
放課後も指導にあたるなど、勤務時間の線引きが難しい教員の仕事の特性に配慮したものだ。「4%」は当時の平均残業時間(月約8時間)から算出された。だが令和4年時点で残業時間は小学校教員が推計月約41時間、中学教員が約58時間に上る。調整額が実態に合わないと指摘されて久しい。
中教審の議論に先立ち、自民党の文部科学相経験者らでつくる特命委員会は処遇改善の提言をまとめ、調整額を基本給の「10%以上」とするほか、学級担任手当の創設などを求めた。
「定額働かせ放題」などと揶(や)揄(ゆ)される職場では、優秀な人材が離れてしまう。実態に応じた改善は必要だ。その際、力のある教員を育て、優秀で意欲ある教員に報いる視点を忘れないでほしい。
教員の世界は寝食を忘れて子供と向き合う熱血教師がいる一方、授業も満足にできず、さっさと帰る者もいる。その差が大きいと指摘されてきた。ダメ教員を手厚く処遇する必要はない。
とりわけ激務を嫌い、教頭・副校長のほか、指導的役割を果たす主幹教諭らのなり手が少ないとされる。職責に見合った待遇は、優秀な人材が力を発揮し、学校教育の質向上につながるはずだ。
教員は一人で問題を抱え込み、孤立化しがちだ。教頭らに人材を得ることは、学校内外が連携する組織運営の改善にもなろう。
さらなる働き方改革は急務だ。文科省調査では学校行事削減や、土日に休養を設ける部活動改革などで、勤務時間はやや減少した。だが、行事削減などで学校の魅力が低下すれば本末転倒だ。教育委員会への無用の報告など悪慣行も優先して見直すべきである。
教育再生は教員の力にかかる。やる気ある教員が集い、腕を存分に振るえる環境の整備に知恵を絞ってもらいたい。