西日本鉄道はフィリピンの現地デベロッパーと共同で、同国で新たに戸建てやマンションなど合計約4千戸の住宅開発を行う。海外不動産事業は同国やベトナム、米国など5カ国で展開し、参画数は今回で22件目。本業は鉄道やバスなどの運輸業だが、収益基盤拡大に向け海外事業に力を入れ、国内で培った街づくりのノウハウを武器に開発実績を積み上げている。
新たに開発するのはフィリピンの首都、マニラのベッドタウンに位置する2地域。タナウアン市では約15ヘクタールの敷地に戸建てなど955戸、ジェネラルトリアス市では約60ヘクタールに戸建てや低層マンション3153戸を建設する。2024年10月~2025年11月ごろの完成を目指している。
フィリピンは経済成長と人口増加で住宅需要が堅調で、同国で先行して開発した低層マンションも売れ行きは好調だった。
西鉄は本業の鉄道・バスが人口減少などで逆風にさらされる中、海外で不動産事業やホテル、国際物流事業を積極的に展開している。令和4年度は国際物流事業が好調で、事業利益に占める割合は海外事業が51%と半分以上を占めた。
海外不動産は2015年にベトナムに初進出し、現地デベロッパーと事業会社を設立して開発するスキームで案件数を増やした。同社の全体の利益に占める割合は現在約4%だが、国内の再開発事業やバス事業で培った経験を生かし、ベトナムでは公共交通の整備を組み合わせた大規模開発に参画するなど存在感を高めている。
海外不動産事業は国内の私鉄などが相次いで進出しており、優良案件の獲得が課題となっている。信頼できる現地事業パートナーの存在が鍵を握るといい、西鉄海外開発事業部の香山太郎部長は「優良パートナーの獲得競争や土地情報の取得も厳しさを増すが、福岡でインフラ事業をしっかりとやっていると伝え、信頼を得ている」と語る。
長期目線で投資を回収する経営力も求められるが、林田浩一社長は将来的には現地パートナー主導ではなく、西鉄単独での事業展開を目指すとし、「実績を積み、西鉄の旗を掲げて売っていく」と意気込む。(一居真由子)