岸田文雄首相の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件で逮捕された木村隆二容疑者(24)=鑑定留置中=が、昨年7月投開票の参院選に被選挙権の年齢制限などで立候補できなかったのは憲法違反だとして、国に10万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。本多久美子裁判長は、請求を退けた1審神戸地裁判決を支持し、控訴を棄却した。
代理人弁護士をつけない本人訴訟だったが、木村容疑者は出廷しなかった。
木村容疑者は、参院選の被選挙権(30歳以上)を満たさず、300万円の供託金も用意できないことを理由に立候補できなかったのは、法の下の平等などを定めた憲法に違反するとして公示後の昨年6月に提訴。同年11月に1審神戸地裁はいずれも合理的な規定として請求を棄却したため、「全部不服」として控訴していた。
訴訟で木村容疑者は、昨年9月に実施された安倍晋三元首相の国葬を「世論の反対多数の中で強行した。民主主義への挑戦は許されるものではない」と批判。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治家の関係についても「投票行為が抑制され、既存政治家は統一教会の組織票で当選している」などと持論を展開していた。
大阪高裁の控訴審は今年3月23日に第1回口頭弁論が開かれたが、即日結審。木村容疑者のものとみられるツイッターには同日、「審議を拒否」と不満のにじむ投稿がされていた。
捜査関係者によると、木村容疑者は、1審判決が出た昨年11月ごろに火薬の原材料を購入していた。和歌山県警は、選挙制度への不満が動機につながった可能性もあるとみている。
木村容疑者は威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された後、火薬類取締法違反容疑で再逮捕された。現在は刑事責任能力の有無を調べるための鑑定留置中。