セブン&アイ・ホールディングスが25日に開いた株主総会では、井阪隆一社長ら現職役員4人の退任を求めた株主提案が否決されたが、近年、株主総会ではこうした株主提案は増加傾向にある。特に自社株買いなどの株主還元策や事業売却、経営陣刷新などを要求する「物言う株主」と言われる投資ファンドの存在感は高まっている。政府などが企業価値向上や変革を促すため、投資家への情報公開を強化してきたことなどが背景にあり、今後もこの傾向は続く見通しだ。
大和総研によると、昨年6月の株主総会では過去最多となる97社で330議案の株主提案が行われた。前年よりも76%増えており、鈴木裕主席研究員は「株主提案に至る前の水面下の対話でも、物言う株主による企業への働きかけは活発化している」と話す。日本企業の株価が全体として割安感があることも増加の要因だという。
物言う株主は投資先企業の経営者に、経営戦略などを提案、株価を引き上げたうえで売却し、利益を得ることを目的としている。そのため、配当の増額や自社株買いといった短期的な視点で株価引き上げをもくろむことがあり、経営陣との対立に発展することもある。取締役再任案が否決された令和3年の東芝の総会などはその典型だ。
一方で、物言う株主の率直な提言は、硬直的になりがちな日本企業を、変革に向かわせるといった効果も期待できる。政府が企業の情報公開を促すのもこうした観点からだ。脱炭素化やデジタル化など企業の変革が求められる中、物言う株主も企業の持続的成長の観点から提案を行うケースが増えている実態がある。(蕎麦谷里志)