米連邦政府の債務上限引き上げを巡るバイデン大統領と野党・共和党の協議は決着の行方が見えず、デフォルト(債務不履行)に陥る恐れが市場で高まりつつある。米経済が混乱すれば、つながりが強い日本経済にとっても対岸の火事とならず、急速に円高と株安が進みかねない。新型コロナウイルス禍から回復しつつある景気を一気に冷やす可能性がある。
24日の東京株式市場の日経平均株価は続落した。終値は前日比275円09銭安の3万0682円68銭。債務上限問題の先行き不透明感から売りが広がり、東京市場は取引開始直後から下落し、下げ幅は一時390円を超えた。
米政府の債務は拡大を続け、上限見直しは第二次大戦以降で100回以上に達する。デフォルト危機は2011年にも起き、直前で上限引き上げ法案が成立したが、米国債の格下げが行われて市場が混乱した。
今回、デフォルトの「Xデー」は6月1日とされるが、公務員給与支払い延期などで7月下旬まで先送りが可能だとの見方もある。ただ、共和党ではトランプ前大統領の勢力がバイデン氏との対決姿勢を鮮明にしており、事態がさらに悪化する懸念もある。
米国が混乱すれば、相対的に安全とみなされる円買いが進み、円高が進行する。円安を背景に業績好調な輸出関連企業が打撃を受ける恐れがある。
さらに世界の金融市場にリスク回避の動きが広がれば、最近の日本株の好調を支えてきた海外からの流入マネーが引き揚げられ、バブル経済後の最高値を更新してきた株価は一気に落ち込む可能性もある。ある市場関係者は「円安でげたを履いていた分、米国株より日本株は下げる」とみる。
ドル、米国株に加え米国債も下げる「トリプル安」になれば、事態は深刻だ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「5月中に合意できれば影響は軽微だが、議論がもつれると打撃は大きくなる」と警告する。(中村智隆)