無数の人々が行き交う東京・渋谷ターミナルの通路に、「明日の神話」という大壁画がある。幅30メートル縦5・5メートル。原爆が炸裂(さくれつ)する瞬間をモチーフに岡本太郎が描いた。逆巻く炎と煙。猛烈なエネルギーに人が焼かれ、第五福竜丸らしき小舟に炎が迫る。同時期に制作された大阪万博の「太陽の塔」と、対をなす作品だ。
▶太陽の塔は過去、現在、未来を象徴する3つの顔を持つ。万博開催から半世紀以上になるが、背面に描かれた黒い太陽の呪いは解けない。頂部に輝く黄金の顔は未来の象徴だが、どこか虚空をみつめたままのようである。
▶核兵器を保有する米英仏首脳が先週、そろって広島の原爆慰霊碑に献花した。象徴的な意味は大きいが、現実との落差も大きい。核をめぐる状況は近年急激に悪化している。北朝鮮が核実験を重ね、ロシアによる戦術核の使用が現実味を帯びた。禁断の兵器を全廃できる日は来るのだろうか。「明日」への道筋を、探さねば。