次の感染症危機の到来に備え、科学的知見の基盤を早急に強化し、流行が起きた際には初期段階から迅速に対応できる体制を整えてほしい。
国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たな専門組織として「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案が衆院本会議で可決され、参院に送付された。今国会で成立する見通しだ。
同機構は、新型コロナ禍で中心的役割を果たした米国の疾病対策センター(CDC)をモデルにした、「日本版CDC」との位置づけだ。政府の有識者会議の報告書を踏まえ、岸田文雄首相が昨年6月に設置を表明していた。
感染研はウイルスの基礎研究や感染状況の分析を担当し、病院機能を持つ国際医療研究センターは臨床研究を行っている。基礎から臨床までの一貫体制を構築することで、病原体の特徴などを迅速に分析することが期待できる。
新型コロナ禍では政府の対応は後手に回った。新たな感染症の特徴が早く判明すれば、医療体制や感染者の隔離、ワクチン接種などに関する知見を、政府内で速やかに共有することができよう。
ただ、課題も多い。新型コロナ対応を担う各組織の役割や全体像が分かりにくい点だ。
政府は今秋にも内閣官房に司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を新設する。厚生労働相の監督下に置かれる同機構は統括庁に知見を提供し、統括庁は政策立案などを一元的に行う。同機構の創設後も、厚労省に新型コロナ対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」はそのまま必要に応じて活用するという。
政府内の指揮系統を明確化し、感染リスクに関する国民への情報発信についても混乱がないように整理しておく必要があろう。今後の参院審議では、各機関の役割や連携の在り方をより明確にすることが求められる。
政府は令和7年度以降の創設を目指すというが、これでは悠長にすぎる。法案成立後は速やかに機構の整備に着手すべきだ。
パンデミック(世界的大流行)が起きた際には、同機構の病院機能が逼迫(ひっぱく)する事態も懸念される。日本版CDCは、感染症対策を迅速に行うための「心臓部」ともいえる。有事でも調査・研究が滞りなく行えるような体制づくりが不可欠だ。