先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が19日に開幕する。これに合わせた各地の関係閣僚会合の開催都市は、世界にご当地をアピールする好機として「おもてなし」とともに、魅力発信に躍起。4月、岸田文雄首相の選挙応援演説中に爆発物が投げ込まれた事件を受け、要人警護も強化し厳戒態勢で臨んだ。
「成功へ全力」
6月24、25両日、G7男女共同参画・女性活躍担当相会合が開催される栃木県日光市。「オール栃木で歓迎したい」(福田富一知事)として機運醸成や準備に余念がない。
4月、会場となる奥日光・中禅寺湖の湖畔に記念モニュメントがお目見えし、歓迎ムードを盛り上げる。日光産材を使用した木製で、幅約6メートル、高さ約1・3メートルのモニュメントは「G7 NIKKO」とデザインされ、新たなフォトスポットとして外国人観光客らの人気を集めている。
3月には、G7各国の駐日大使館や在日外国メディア特派員らを対象とした日光市などを巡るツアーも実施する力の入れようだ。
G7閣僚会合の県内開催は初めてで、「県全体への多大な効果が期待される」と意気込む福田氏。日光市の粉川昭一市長も「成功するよう全力で支援したい」と足並みをそろえ、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ海外からの客足回復に期待を膨らませる。
警備態勢については、関係機関と連携した上で「不審者の職務質問や所持品検査の徹底など警護を強化し万全を期したい」(栃木県警警備部)という。
トップセールス
一方の群馬県。令和2年にオープンしたコンベンションセンター「Gメッセ群馬」(高崎市)を会場に、4月29、30両日にG7デジタル・技術相会合が開かれた。県にとって初のG7関係閣僚会合で、国内最先端の「デジタル県」を目指す山本一太知事はトップセールスに奔走した。
最大の見せ場が閣僚会合前日、G7首脳らが宿泊した伊香保温泉での県主催「歓迎レセプション」だった。司会進行役を務めた山本氏は、群馬の魅力と日本の温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録運動をPR。終了後、自身のブログで「大成功だった」「群馬県の『勢い』は、きっと伝わったはずだ」と自賛した。
開幕初日、国指定重要文化財の迎賓施設「臨江閣」(前橋市)での夕食会では、上州牛や上州地鶏、群馬生まれのイチゴ「やよいひめ」を使った「いちご大福」など県産品を食材とした料理でもてなした。ここでも山本氏が「『話しすぎ』といわれたかも」と振り返ったくらい、持ち前のマシンガントークで魅力発信に力を入れた。
将来のデジタル世代ともいえる地元の高校生も負けていない。路線バスの現在地や混雑具合が事前に分かるソフトなど、4月に実施したデジタル技術の活用策を議論する「スクールサミット」でまとめた提案を閣僚会合で発表した。河野太郎デジタル相は「すばらしい提案内容だった」と評価した。
国際会合前日の4月28日からはGメッセ群馬で「デジタル技術展」(デジタル庁主催)を開催し、約100の企業や行政、団体などがロボットやデジタル関連の先進技術を紹介した。デジタル庁のブースには河野デジタル相のアンドロイドが出迎えてくれ、「ようこそ温泉地、群馬・高崎へ」と挨拶(あいさつ)し、笑いを誘っていた。
G7給食、バイキング…
サーモン入りシチューやメープルのデザート…。4月24日、新潟市立万代長嶺小の児童は、同市で開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、サミット参加国、カナダのご当地料理をイメージした給食メニューを味わった。
市内の小中学校や幼稚園など計約260カ所の子供たちに、参加国の地元料理を通じて関心を高めてもらう「G7給食」の一環で、この日は新潟市の中原八一市長も参加した。
世界経済に不透明感が増す中で開かれた注目度抜群の国際会議とあって民間も機運醸成に動いた。市街地の「ホテルイタリア軒」では大型連休中の2日間、ディナーに参加7カ国の料理をバイキング形式で提供。市内の英会話スクールではG7に関する基礎知識を、米国人講師から英語で学ぶ特別授業を企画した。
また、会場の国際会議場「朱鷺(とき)メッセ」のプレスセンターでは、新潟の魅力を知ってもらおうと、新潟名物のタレかつ丼などをふるまい、持ち帰り用としてボトルに入った地酒も提供した。
ドローン警戒
名湯として知られる秋保温泉(仙台市)の老舗旅館では、今月12日から3日間の日程でG7科学技術相会合が開かれた。会場は山間部にある温泉街で、道路でのアクセスも限られる。要人らの警備を担う警察当局が特に警戒したのは、上空からのドローンによる不測の事態だ。離陸の可能性のある温泉街の中心を流れる名取川は立ち入り禁止。開催期間中と、その前後は会場周辺の飛行抑制区域も設定した。
同市は平成28年の伊勢志摩サミット(三重県)の際、G7財務相・中央銀行総裁会議が同じ温泉地で開催され、宮城県警として警備実績はあるものの、今回は岸田文雄首相近くに爆発物が投げ込まれた和歌山市の事件が発生し、警備態勢を強化した。
原幸太郎県警本部長はG7閣僚会合前の署長会合で「注目の集まる国際会議では国際テロ、サイバー攻撃のほか、ローンオフェンダー(単独テロ)も想定される。実効性のある万全の準備を整える」と指示していた。
長野県軽井沢町で4月にG7外相会合が開催され、同県警幹部も警備態勢について「同種の事件を防ぐため、強化した」という。
3月の時点で、開催期間中は外相会合の会場となった軽井沢プリンスホテルに加え、隣接する大型アウトレットモール「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」の休業が決まっていた。
付近も一般の人たちを立ち入り禁止とし、玄関口の北陸新幹線・軽井沢駅に多数の警察官を配備した。同駅構内では係員が「ショッピングプラザは休業です」と書かれたボードを掲げ、知らずに訪れた買い物客らへの対応に追われていた。