【ロンドン=板東和正、パリ=三井美奈】欧州歴訪中のウクライナのゼレンスキー大統領は15日、ロンドン郊外のチェッカーズ(英首相別荘)を訪問し、スナク英首相と会談した。英政府によると、スナク氏は同日、数百発の防空ミサイルと、飛行距離200キロを超える長距離攻撃型無人機数百機を含む無人航空機システムをウクライナへ新たに供与する方針を確認した。
ゼレンスキー氏は訪英に先立ちイタリア、ドイツ、フランスを訪問し、ロシアに対する大規模攻勢に向け、各国首脳に戦闘機の提供を求めた。広島での先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を前に、対露圧力で支援固めも目指した。
ゼレンスキー氏は出迎えたスナク氏に「英国はこれまで多くのことをしてくれた」と感謝の意を表明。会談では今後のウクライナへの軍事支援を協議した。
英政府は11日にもウクライナに長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」を供与すると発表した。英BBC放送などによると、ウクライナに長距離ミサイルを提供するのは英が初めて。
スナク氏は15日、「英国はウクライナとその国民を支援することに揺るぎはない」と強調した。
ゼレンスキー氏は14日には、ベルリンでショルツ独首相、パリでマクロン仏大統領とそれぞれ会談。ショルツ氏との共同記者会見では、「戦闘機の支援国連合の構築を目指している。今回の訪欧の目的でもある」と協力を求めた。
ショルツ氏はレオパルト1戦車、IRIS-T防空システムなど総額27億ユーロ(約4千億円)の支援を発表した。戦闘機については「防空ではすでに、効果的な装備を提供している」と述べるにとどめた。会談では広島サミットも議題になり、ゼレンスキー氏は「G7でのわれわれの立場を調整した」と述べた。
ゼレンスキー氏はパリでマクロン氏との会談後、共同声明を発表した。フランスはウクライナ軍の大隊に、偵察戦闘車や装甲車など数十両を提供し、兵員の訓練を行うと表明した。広島サミットを視野に両大統領は、ロシアに対する追加制裁が必要という立場も確認した。仏大統領府筋は、戦闘機供与については「まず操縦訓練が必要。時期尚早」とした。
13日に会談したイタリアのメローニ首相も武器支援の継続を約束した。